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こころに残す ふくしまの風景
真野の万葉歌碑
(南相馬市)
市街地見下ろす笠女郎の”遺産”
真野の万葉歌碑
鹿島区の中心部を見下ろす「真野の万葉歌碑」。周囲の桜は間もなく見ごろを迎える
 1200余年前、都の歌人・笠女郎(かさのいらつめ)が万葉集の編集者の1人とされる大伴家持に対する情熱を詠んだ歌「みちのくの真野の草原(かやはら)遠けども面影にして見ゆといふものを」 (万葉集巻3)が南相馬市鹿島区(旧鹿島町)の存在を全国に知らせた。
 真野の草原とは、真野川周辺の草原を指す。町内には国指定史跡・真野古墳群や行方(なめかた)軍団とのかかわりが注目される真野古城など本県を代表する遺跡が集中している。
 「みちのくの真野の草原は遠いけれど、面影として見ることができます。しかし、あなたは同じ奈良で近くにいるのに、お目にかかれないとは」が歌の大意。
 都から遠く離れたあこがれの土地(真野)と笠女郎の家持に対する思いを重ねた巧みな歌として知られる。県内の地名を詠んだ万葉歌のうち、作者が判明しているのはこの歌だけだ。
 「ふるさとおこし運動」が全国に広がる前の1960(昭和35)年、同区内の文化団体が「みちのく真野」を顕彰しようと、町の中心部に近い桜平山(さくらだやまに歌碑を建立した。高さ約2.5メートルの棹石(さおいし)に美智子皇后の書の師だった故藤岡保子さん(当時77歳)が揮毫(きごう)した流麗な文字を刻んだ。
 桜平山のほぼ中央に建てられていた歌碑は、グラウンドの整備に伴って、区の中心部を見下ろす北側に移された。往時を知る人は「草が生い茂る中に立つ歌碑は風情があった」と懐かしむが、現在は周囲に桜が植えられ、別の意味で情緒を醸し出している。
 また、町は68年に明治100年を記念して、同じ桜平山に「みちのく真野万葉植物園」を建設した。 
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 「真野の万葉歌碑」が立つ桜平山はJR常磐線鹿島駅から徒歩で15分。万葉植物園には、近代短歌史の巨人・斎藤茂吉が野馬追の騎馬武者を詠んだ歌碑も立ち、短歌愛好家が訪れている。
<2> 2003.04.11
 

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