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こころに残す ふくしまの風景
県教育会館
(福島市)
古里の山々から屋根をデザイン
県教育会館
屋根の曲線。屏風のような側壁が特徴の県教育会館
 国道4号北町交差点から東に数百メートル。400年前の「松川の戦い」で伊達政宗を撃退した本庄繁長の墓のある長楽寺、さらに政宗の祖父の奥州探題・晴宗が眠る宝積寺の前をすぎると、屏風(びょうぶ)を立てたような側壁、曲線がうねる屋根が見えてくる。
 外見だけでなく、大ホールを壁で支えるなど、ざん新な構造で知られる県教育会館は、戦後の本県を代表する建造物として国内だけでなく世界にも紹介された。
 現在の教育会館は2代目。旧会館は1953(昭和28)年1月の昼火事で全焼した。現会館は全教員が給与の10%を拠出して56年9月、県内教育文化の殿堂として再建された。
 教育会館には音の反響性や吸収性を高める天井、オーケストラピットなど音楽堂としての機能も備わっていた。完成した当時、こうした公共施設は福島市になかったことから、コンサートや歌舞伎・演劇鑑賞の利用申し込みが殺到した。
 設計を担当した大高正人氏は三春町出身。県立美術館や日本万国博覧会会場などの設計を担当し、わが国を代表する設計者の一人として知られる。
 会館南側の堤防の向こうには阿武隈川がゆったりと流れる。大高氏は立地の良さを高く評価。屋根の曲線は同会館の建設予定地から見た吾妻、安達太良の山並みから思いついたという。
 大高氏は設計に当たり、「教育会館としての使命を果たす一方、地方文化の砦(とりで)たり得るものにしたいというのが念願だった」と書いている。
 また、構造設計に携わった木村俊彦氏は「波形の屋根やアコーディオンのような壁を使って設計したのは、単に珍奇な形の魅力や新技術へのあこがれでなく『安くてよい講堂』への切実な意欲に導かれたのにほかならない」としている。教育会館は青年建築家の理想を凝縮した建物だった。
 同会館の事務局長を15年間務めた市川健一さんは「建物の新しさや機能では類似施設に劣る面もあるが、わが国を代表する建築家の設計という歴史にも関心を持って見てほしい」と話している。
 >>> 行ってみよう
 福島市の国道4号北町交差点から車で数分。福島駅東口3番乗り場福島交通バス「東堀河町」行きで「上浜町」バス停下車徒歩2分。教育会館南側の阿武隈川堤防上にはサイクリングロードが整備されており、伊達市からも自転車で会館前に到達できる。
<25> 2003.09.19
 

福島民友新聞社
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