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こころに残す ふくしまの風景
勿来の関跡
(いわき市)
歌枕で知られる蝦夷南下の関門
東北地方への浜通りの玄関口に位置し、歴史と文学に彩られた勿来の関。関跡には源義家像がそびえ、県内外から訪れる観光客を見守っている
 いわき市の最南端に位置し、東北地方への浜通りの玄関口となっている勿来地区。太平洋が広がる勿来海岸に沿って走る国道6号の西側、標高130メートルの小高い山に勿来の関跡はある。
 勿来駅から常磐線の陸橋を渡り、松並木の遊歩道を500メートルほど上ると、平安後期の武将、源義家の銅像が姿を現す。その横には関跡を示す石碑と関門が立ち、訪れる人たちをいざなう。樹齢100年以上の松に囲まれた周囲は、けん騒の市街地とは別世界の閑静なたたずまいをみせる。
 白河関、山形県温海町の念珠関(ねずがせき)とともに奥州3古関に数えられ、4世紀から5世紀ごろにかけて蝦夷の南下侵入を防ぐための関門として設置されたと伝えられている。当時は菊多関と呼ばれていたという。実際にあった関跡は判然としない。
 いわき市勿来関文学歴史館の学芸員脇坂省吾さん(33)は「菊多関と勿来の関は17世紀ごろから同じものと考えられてきたが、勿来の関は『来る勿(なか)れ』の意味で当初は文学上の洒落(しゃれ)の世界だった」と推測する。
 源義家が詠んだ「吹く風をなこその関とおもへども道もせにちる山桜かな」の和歌に代表される歌枕の地として全国に知られる。関門から同文学歴史館に至る石畳の小道は「詩歌の小径(こみち)」として、小野小町、和泉式部らの句碑や歌碑が立ち、文学散歩を楽しむこともできる。
 市は勿来の関跡を中心に集客力のアップを目指して公園の再整備事業に着手し2005(平成17)年度の完成を目標に、体験学習室の機能も持たせる管理棟などの整備を進めている。脇坂さんは「関跡の存在を大事にしながら、いわきの文化、文芸の玄関口になってほしい」と期待する。
 勿来の関は付加価値を高めた観光スポットとして変容しようとしている。
 >>> 行ってみよう
 常磐線の勿来駅から徒歩40分、車で5分。常磐自動車道のいわき勿来インターからは10分。無料駐車場がある。江戸時代の風情や、ゆかりのある和歌を紹介する市勿来関文学歴史館が2001(平成13)年3月に装いを新たに再オープンした。勿来海岸も見渡せる。
<26> 2003.09.26
 

福島民友新聞社
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