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こころに残す ふくしまの風景
白水阿弥陀堂
(いわき市)
先人が夢に見た極楽浄土の世界
白水阿弥陀堂
浄土庭園の奥にたたずむ白水阿弥陀堂、建物を囲む木々も色づきはじめ、その存在を際立たせている
 極楽浄土の世界を具現化したとされる浄土庭園。善男善女を救済するといわれる「弘誓の橋」を越えると、クスノキやイチョウ、モミジなど、無数の木々に包まれながら、800余年の長きにわたって地域を見守ってきた阿弥陀堂が姿を現す。目を閉じると、阿弥陀堂を中心とした「極楽浄土」が広がってくる。
 白水阿弥陀堂は平安時代の1160(永暦元)年、鎮守府将軍藤原清衡の娘徳姫が夫の死後に出家し、建立したとされる。正式な名は「願成寺阿弥陀堂」。阿弥陀堂の所在する内郷「白水」町の名は、徳姫の故郷奥州平泉の「泉」を、上下に分割して名付けられたと伝えられている。
 浄土庭園と同様、阿弥陀堂内部も極楽浄土を具現化していた、とされる。天井や長押(なげし)には、まるで虹を思わせる極彩色の文様が描かれ、四方の壁板にも壁画が施された。現在では、一つの壁にわずかな跡を残すにとどまっているが、その面影からは、当時からの歴史、伝統とともに、先人の描いた夢の世界がのぞく。
 白水阿弥陀堂は、県内の建造物では唯一の国宝。1952(昭和27)年、国宝の指定を受けた。堂内に安置されている阿弥陀如来、観世音菩薩、勢至菩薩は、いずれも国重要文化財に指定された寄木づくりの像。作者は不明だが、名工・定朝の影響を受けた平安時代後期の典型的な作品群として知られている。
 それでも赤土隆行住職は「『国宝』だからといって守ってきたわけではない」と話す。平等院鳳凰堂や中尊寺金色堂の流れをくむ白水阿弥陀堂が伝える歴史と伝統は、「当事者だけでなく、一人ひとりが意識を持って守っていかなければ」と赤土住職。
 いわきの地に今も残る極楽浄土の世界に足を踏み入れて、先人が鮮やかに彩った「国の宝」の本来の姿を感じ取ってほしい。 
 >>> 行ってみよう
 JRいわき駅から内郷駅前経由川平行きのバスで「国宝阿弥陀堂前」下車徒歩1分。常磐自動車道いわき湯本インターチェンジから車で約20分。拝観料は大人(中学生以上)400円。拝観時間は午前8時30分―午後4時(11月―翌年3月は午後3時30分)まで。
<29> 2003.10.17
 

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