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こころに残す ふくしまの風景
共楽亭
(白河市)
定信公の平等観 具現化した茶亭
共楽亭
松平定信がこよなく愛したという茶亭「共楽亭」。当時のたたずまいと風景を残している
 日本最古の公園、白河市の南湖公園に建つ茶亭「共楽亭」には、白河藩主松平定信(1758―1829)の思想が凝縮されている。定信がこよなく愛したというこの茶亭からの眺望は、ほぼ当時のまま楽しむことができる。

 山水の 高きひききも
 隔てなく 共に楽しき 
 まどいすらしも


 定信が共楽亭で詠んだ和歌で、「身分の高い低いにかかわらず、ここに来たときは、平等に楽しみましょう」という意味がある。
 市の佐川庄司学芸員によると、定信は、江戸時代の儒学者貝原益軒(1630―1714)の思想の影響を受けていたという。「他人が楽しんでこそ、自分も楽しめる」。この言葉を具体化したのが、士民(すべての身分の人)に開放することを目的に造った南湖公園であり、共楽亭だった。
 1801(享和元)年、南湖開園とともに建造された、寄棟造りの木造木羽葺(こばぶ)き平屋の茶亭は、構造そのものが「共楽」を表している。茶室は権力者が1人2人を相手にもてなすためのもので、通常その空間は狭いが、共楽亭は八畳二間と広い。
 また、身分の高い者と低い者が同じ場所にいる時、敷居を隔てた対面となるが、その敷居もない。北側を除く三方に巡る縁側・切目縁(きりめえん)も、いかにも開放的だ。
 当時の南湖公園を描いた資料には、南湖周辺を商人や旅人が行き来する様子が描かれている。この共楽亭も一般の人に開放され、定信が領民と同じ時間を楽しんだことが想像される。
 茶亭は、南湖公園の北側中央にあり、東に関山、西に那須連峰を望む。現在では、草木が成長し、一部眺望を遮っているが、借景による景観美を特徴とする同公園の中でも、最良の観望ポイントとなっている。
 定信は、ここで孫をひざに抱き、一緒に遊んだという記録が残っている。共楽亭周辺には、間もなく真っ赤な落ち葉が敷き詰められたように広がる。夕陽に照り返される紅葉の中に、静かにたたずむ共楽亭を見つめると、定信の楽しげな表情が浮かんでくる。
 >>> 行ってみよう
 JRバス関東「棚倉行」で、JR白河駅から18分、JR新白河駅から8分、「南湖公園前」下車。湖畔を回り徒歩10分。福島交通では、JR白河駅から「白河の関行」で約10分、「南湖東口」下車で、徒歩10分程度。東北道白河インターチェンジから車で10分。
<31> 2003.10.31
 

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