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こころに残す ふくしまの風景
安珍堂
(白河市)
いにしえの悲恋伝える念仏踊り
安珍堂
安珍の座像が安置されている安珍堂
 歌舞伎「娘道成寺」で知られる修験僧安珍は白河市根田の出身。根田地区ではいつのころからか、安珍を供養する念仏踊りが始まり、今に伝わる。毎年3月27日の「安珍忌」に、安珍像が鎮座するお堂の前で奉納する念仏踊りが有名だが、安珍とすべての仏にささげる月2回の念仏講は、日常の生活の中で静かに守り続けられている。
 安珍清姫物語は、平安時代の話。安珍は和歌山県熊野への修行の途中、清姫と出会う。清姫は安珍に思いを募らせるが、安珍は修行の身、と清姫のもとを去った。気付いた清姫は蛇身と化し、日高川を越え、道成寺の鐘に隠れた安珍を情念の炎で焼き殺した―というあらすじだ。
 安珍堂ができたのは1986(昭和61)年11月。前年3月に和歌山県の道成寺から里帰りした安珍座像を安置するためだった。白河根田安珍歌念仏踊保存会会長の野崎辰江さんによると、里帰りは3度目にして実現した。
 安珍の像は、地元の人にとっては、ぜひとも身近に置いておきたいものだった。29年と46年ごろに里帰りを試みたが、いずれも地震の影響で実現しなかった。それから40年近くたち、白河と和歌山の御坊両ライオンズクラブの交流から、安珍の里帰りがかなった。このときも地震で新幹線が遅れ、地元では「清姫が離さないのでは」とささやかれたという。
 白河商工会議所などを中心に「安珍像郷里安置対策委員会」を設置。市民や企業、団体から900万円余の寄付金を集め、安珍の墓から約500メートル離れた現地に安珍堂を設置した。13.2平方メートルの木造平屋で、ヒノキ柱を使った銅板ぶき。堂に行くための白河石を使った41段の石段も合わせて整備した。
 江戸中期ごろから始まったとされる安珍歌念仏踊は、伝統芸能というより、地域の習わし。現在は保存会によって、毎月16、24日の2回、念仏講が開かれている。それでもやはり、安珍忌の安珍像の前での奉納は別格。今年も安珍堂で、いにしえの悲恋が語られる。
 >>> 行ってみよう
 JR白河駅から、福島交通バス「須賀川行」で10分、「根田」停留所。東北道矢吹IC、白河ICからはそれぞれ、国道4号を白河方面、矢吹方面へ約10分、小高い山の上、切り出したがけのそばにお堂が見える。
<48> 2004.03.19
 

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