登山「緩み」大敵、余裕ある計画を 県内遭難、22年すでに66件

県内で山岳遭難が増えている。中でも南会津郡では今月、登山者が転倒して動けなくなるなどして救助される事故が続発し、年間の救助件数はすでに昨年1年間の件数を超えた。紅葉やキノコ採りを目的に山に向かう人が増えるシーズンを迎えているが、山岳救助を担う関係者は「楽しい登山が命に関わる事態につながる。『自分は大丈夫』とは思わないでほしい」と警鐘を鳴らす。
南会津郡を管轄する南会津地方消防本部によると、今年の山岳救助の件数は31件(14日現在)で、昨年1年間の21件、2020年の26件を超え、コロナ禍前で救助件数が多かった19年の42件に迫る勢いだ。
今月7~12日、雨でぬれた木道で転倒したり、キノコを採っていて滑落するなどして救助された事故が5件相次いだ。このうち4件は、檜枝岐村の燧(ひうち)ケ岳(がたけ)(2356メートル)と南会津町の田代山(1971メートル)が現場となった。燧ケ岳は東北以北で最高峰の山で、登山には往復7時間はかかるため、相応の体力が必要だ。救助された50~80代の登山者らは経験豊富で、装備も充実していたという。
同本部が組織する山岳救助隊を統括する星竜平消防司令(46)は「天候などによって上級者でも大きな事故につながる」と指摘。ベテランであっても、当日の天候などに気を付ける必要があると強調した。
10月以降、山中の夜の気温は氷点下まで下がり、命を救えるかは時間との勝負となる。星消防司令は「無理をせず下山する勇気も必要。安全第一に多くの人に南会津地方の自然を楽しんでほしい」と述べた。
GPSアプリ用意を
星消防司令はこのほか、現在地が分かる衛星利用測位システム(GPS)機能が付いた登山者専用のアプリが、救助の際に役立つことを指摘した。
天候や時間帯の問題でヘリコプターが出動できない場合、約10人編成の救助隊が現場に向かうことになる。隊員たちは要救助者を数分交代で背負いながら長い時間をかけて下山する。アプリで登山者の現在地が正確に把握できれば、救助に要する時間が大幅に短縮できるという。
スマートフォンなどにダウンロードして使う登山専用アプリはいろいろな種類があり、登山届を提出できるものもある。県警は登山届アプリ「コンパス」と協定を結んでおり、このアプリに登録された情報を捜索に活用している。
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県警総合運用指令課によると、今年の県内の山岳遭難の件数は16日現在で66件で、前年同期より14件多い。年齢別では60歳以上が半数以上を占めている。県警は1人で入山しないことや余裕のある計画を立てることなどを求めている。
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