多様な治療、選択が重要
肝細胞がん(肝がん)の治療は、大きく内科的治療と外科的治療に分けられます。内科的治療では、局所療法としてラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法、エタノール注入療法、肝動脈塞栓(そくせん)療法、化学療法などがあります。外科的治療では、肝切除と肝移植療法があります。
実際には患者さんの年齢や全身状態、がんの大きさや個数、存在部位、進行程度などを総合的に評価し、最も効果的で侵襲の少ない治療が選択されます。本邦の全国調査(2004〜05年)では、局所療法、肝動脈塞栓療法、手術がそれぞれ約30%ずつ、肝移植も148例で行われています。
ラジオ波焼灼療法は、超音波で観察しながら、皮膚から肝臓のがん部に電極針を穿刺(せんし)し、周波数の比較的低いラジオ波を通電して熱でがん細胞を壊死(えし)させる治療法です。10分間の通電で完治しています。体への負担も少なく安全性が高いことから、局所療法の約70%がこの方法で治療されています。手術が選択されず、肝機能が比較的保持され、大きさが3センチ以内、数が3個以内の肝がんが良い対象です。
また、肝動脈塞栓療法は、足の付け根の動脈からカテーテルを肝臓の動脈まで進め、がんを栄養する動脈に薬剤を注入し塞(ふさ)いでしまうものです。肝臓の動脈にカテーテルを留置して、「リザーバー」という小さな器具を皮膚の下に埋め込んで治療する場合もあります。
一方、化学療法では分子標的治療薬が認可となり、一定の条件下で治療が開始されています。このように肝がんの治療法は多様ですので、主治医とよく相談し効果的で安全な治療法を選択することが重要です。
(県医師会員・福島市)
=次回掲載4月2日
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