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 救命救急センター
【1】―2009.03.16
救命救急センター
患者が搬送されてきた福島医大の救命救急センター。室内に緊張感が張り詰める
救急医療 

 軽症患者を取り扱う診療所は「初期救急」、入院治療が必要な患者を取り扱う病院は「二次救急」と呼ばれる。「三次救急」として高度な治療を施す救命救急センターは福島医大など県内4カ所。患者の症状に応じた適切な役割分担が理想とされる。
第2部
救急医療
 
― 医師の疲弊深刻に  ―
 
 「税金でやってるんだろ。2日も寝込んで来たんだ。早く診てくれ」。事故や急病などで生命の危機にある患者に対応するため、昨年1月に整備された福島医大付属病院の救命救急センターで男性が医師に声を荒らげた。男性の症状は風邪だった。
 この男性に応対した医師は本県の救急医療の第一人者で同センタートップの田勢長一郎部長。田勢部長は「地域の救急医療システムが机上の空論となっている。軽症の人が救命救急センターに来るケースは珍しくない」と話す。診療所や民間病院が休みになる土、日曜日は特に多いという。
 入院治療が必要で地域の診療所では対応できない症状の患者は病院が受け入れ、病院でも対応が難しい重篤な患者を救命救急センターが引き受ける機能分担が救急医療の基本的なシステム。しかし、実際には軽症を含む多くの患者が病院に殺到しているのが現実だ。
 救急医療をめぐっては近年、搬送受け入れ先の医療機関が決まらず、極端な場合には治療を前に死亡する事例が全国で報道されている。新聞紙面には「診療拒否」などの見出しが躍る。
 本県でも昨年12月、事故で重体となった女性が6病院で受け入れを断られ、最終的に救急車到着から1時間12分後に現場から約58キロ離れた病院に運ばれた事例があったばかり。
 「実際には『対応不可能』が事態を正確に表現する言葉だろう」と田勢部長は現場の医師の声を代弁する。患者で病床が次々と埋まり、本当に入院治療が必要な患者が運ばれてきたときに空床がなければ、「対応不可能」となる。また、当直の医師全員が患者の対応に当たっている場合も受け入れられないのが実情だ。
 救急医療ならではの重責も医師を疲弊させる。田勢部長は救急医療の現場を「患者がいつ運び込まれるか分からず、頭から足の先まで、外科系も内科系も全部診断して適切な治療を行い、少しの見逃しも許されない現場」と表現する。病院勤務医の不足が叫ばれる中、限られた医師数で責任を背負い、殺到する患者に対応する。その多忙さは計り知れない。
 田勢部長は「救急は医の原点だと、救急専門医の志望者もいたけれど、みんな燃え尽きてしまう。救急に対する理解は少ないと思いますよ」と静かに語った。
 


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