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 地域生活
【6】―2009.03.21
精神科医療のあり方について意見交換した県中地区ネットワークの会合
地域生活移行 

 退院後の受け入れ条件が整わないなどの理由で精神科病院に長期入院している「社会的入院患者」が地域で生活できるように支援する取り組み。本県で10年以上入院している患者は、2006年の統計で全入院患者6720人の約34%となっている。
第2部
救急医療
 
― 「安心感」が命綱に  ―
 
 「以前はひどい状態でしたが、適切な治療を受ければ治すことができる。今は自立して生活していけるところまで近づきました」。18日夜に郡山市で開かれた会合で、統合失調症で苦しみ、現在は地域社会の中で生活している人たちが体験談を語った。
 会合は県中地区の精神科医療に携わる医師、福祉施設職員らで作る県中地区メンタルケアネットワーク。会長の佐久間啓あさかホスピタル院長(53)は「精神疾患を持つ人が地域で生活するには、救急も含めいつでも治療、相談が受けられるという安心感が欠かせない」と指摘する。症状が急変したときに対応してくれる精神科救急は患者にとって安全安心の命綱だ。
 会合では、今泉修一寿泉堂松南病院副院長(48)の講演も行われた。演題は「県精神科救急医療システムの現状と問題点」。今泉副院長は、隣県で精神疾患で苦しんでいた男性が、自宅を出て乗用車で無目的に徘徊(はいかい)し、本県で交通事故を起こした事例を紹介した。
 出動した救急隊が、男性の言動から精神疾患の可能性を感じ取り、当番病院だった松南病院に入院を依頼。警察や保健所、同病院が連携し、男性の家族を探し出して連絡、入院の手続きを整えた。男性は2カ月後に退院したが、生活の場と、救急医療に取り組んだ同病院との間には、県境をまたぐ距離が介在する。
 今泉副院長は「遠隔地からの救急搬送は、退院後のリハビリなどのフォローアップが難しくなる。県内の精神医療が手薄な地域から搬送されてくる場合も状況は同じ」と語る。
 精神科救急は、県北、県中・県南、会津・南会津、相双・いわきの4方部で運用されており、7方部でブロック分けされている一般の救急医療システムと比べ、救急を担う病院がカバーする範囲は広い。
 県は新年度、精神疾患で長期間入院している人の地域生活の移行に積極的に取り組む方針を固めており、よりよい精神科救急の在り方の議論が不可欠となっている。
 


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