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猪苗代湖の水
猪苗代湖の水
水質日本一の座から転落した猪苗代湖。浄化に向けた新たな取り組みが始まる
第1部 熱くなるふる里

(7)日本一転落で危機感 //県や地元が一丸で対策//  (08.01.09)
 「地球温暖化も背景にあるのか」。年の瀬の先月下旬、県は猪苗代湖が環境省の昨年度河川・湖沼・海域水質測定結果で水質「4年連続日本一」から転落したことを受け、関係部長会議を緊急招集した。トップから「ランク外」への転落は、猪苗代湖を本県の自然環境のシンボルに据える県に大きな衝撃を与えた。
 水質悪化の直接の原因は昨年9月の水質測定で「大腸菌群」が基準値の2.2倍を記録したことからで、ランク付けの対象外になってしまった。県水環境グループは「大腸菌群は水温が高いと増殖しやすくなる」と地球温暖化で水質悪化が加速する可能性も示唆する。温暖化と絡めた水温データがないため、詳細は今後の研究を待つ状況。
 中村玄正日大工学部教授らの研究によると、猪苗代湖はこれまで、安達太良山周辺の酸性温泉や旧硫黄鉱山からの硫酸が長瀬川を通じて流入。酸性の水で溶け出した鉄イオンなどが、環境悪化の原因となる水中のリンなどを付着させて沈殿する自然の浄化システムで水質を保ってきた。湖水の水素イオン濃度は90年代前半まではpH5程度だったが、徐々に酸性度が弱まり、昨年度は年間平均6・5と中性化が進んでいる。
 「猪苗代湖の自然を守る会」の代表で、長年ハクチョウの世話をしてきた鬼多見賢さん(60)=猪苗代町=は、猪苗代湖の水質悪化について「結果はもう少し前から分かっていたはず」と行政の対応の遅れを指摘する。「湖水の富栄養化はデータに表れていた。湖畔のヨシは、湖から窒素とリンを、大気中から二酸化炭素を吸って大きくなるが、そのままにしておくと枯れてまた湖水に戻ってしまい、富栄養化の原因の1つになる。もっと早く着手すべきだった」。
 県や市町村は昨年10月、使い道が減って放置されたヨシ群の伐採に乗り出し、官民一体での大規模な清掃作業も実施した。ボランティアの輪の中に鬼多見さんらの姿もあった。
 かつて上流の裏磐梯湖沼群の水質悪化が猪苗代湖への影響として指摘されてきた。しかし、下水道や農業集落排水、浄化槽などの整備により裏磐梯湖沼群の水質はかなり改善した。鬼多見さんは「机上の研究だけで水質日本一と喜んでいるうちに、ほかに追い越された。裏磐梯ではペンション経営者など都会の人たちが入ってきてモラルが高まった。今度は(猪苗代湖の)地元のわれわれが意識を高めるとき」と呼び掛ける。
 今後の対策に向け、県や関係市町村による「猪苗代湖水環境保全緊急対策会議」が17日から始まる。
   
 


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