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ひるのいこい
生誕100年記念
ひるのいこい
古関の音楽ノートより「きりきりばった」(古関裕而記念館提供)
斎藤 秀隆 (福島東稜高教員)

(20)2009.06.22

農家の昼休みを想定し作曲
 昼すぎのひと時、NHKラジオから流れる田園の風景を思わせるメロディーは、戦後まもなくから続いている長寿番組です。番組は当初、「農家のいこい」といい、後に「ひるのいこい」と名称を変え、もう半世紀以上も国民に親しまれています。
 作曲した古関は、「当時は農家の昼休みを想定して作曲した」(自伝『鐘よ 鳴り響け』)と言っていますが、「日本人は日本人だという意気で作曲したため、時代の変わった現在でも曲の価値は減ることはなく、かえって倍加している」(自伝)と高く評価しています。
 私たちは「ひるのいこい」の音楽を聴くと、なぜか心が癒やされます。それは音楽の良さだけではなく、番組の話題そのものにもありそうです。作物の生育状況やそこから漂う土の臭(にお)い、懐かしい故郷からの便り。また自然の息吹や、素朴な日本の姿があったりと、私たちの心を慰めてくれるのです。

■GHQの政策
 ところで、この番組のスタートが連合国軍総司令部(GHQ)の政策にあったと聞くと驚いてしまいます。GHQは敗戦後の日本の食糧難を解決するために、ラジオで最新の農業技術を広めようと意図したというのです。その後、1952(昭和27)年から「ひるのいこい」として再出発、毎週月曜から土曜日までの昼の零時台に放送されることになったのです。
 自伝によると、古関の頭の中には常に故郷福島の自然がありました。それらがメロディーとなって結晶したのが「ひるのいこい」そのものだったのではないでしょうか。
 現在でも「ひるのいこい」は、毎日たくさんの人が耳を澄ませています。日中から多くの人が古関メロディーに慣れ親しんでいるということは、古関音楽愛好者としても胸を張っても良さそうです。
 ところで、私のところに時々、楽曲の楽譜の有無についての問い合わせがあります。一番多いのが「ひるのいこい」です。しかし、残念なことに福島市の古関裕而記念館には、わずか1ページ弱の直筆の楽譜しか残っていません。
    メ  モ  
 古関裕而作品集 
  しの笛を得意とする人から「ひるのいこい」の楽譜の有無を問われました。現在では『古関裕而作品集』(全音楽譜出版社・3000円)が再版されています。以前は藍川由美編『古関裕而歌曲集』のみで、古関愛好家は大変苦労したそうです。

 


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