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生まれ故郷 中通り編
阿武隈川漁業協同組合のサケのふ化室。卵から稚魚まで育てられ、阿武隈川に放流される
ふくしま発 水のあした
第1部 暮らし支えて【6】
2010年01月09日付
生まれ故郷 中通り編

サケが上がる豊かな川 生態系保護各団体尽力
 実りの秋になると、阿武隈川にひときわ大きい魚影が現れ、水しぶきを上げる。川で生まれ、海へと4年の旅を経て大きく育ったサケだ。子孫を残すため、太平洋に注ぐ河口から途中の支流で行く先を変えるサケもいれば、さかのぼること70キロ超の福島市南東部にある信夫ダムまで上ってくるサケもいる。「阿武隈川にサケが遡上(そじょう)してくることを知る市民は、意外に少ない」と阿武隈川漁業協同組合事務局長の堀江清志さん(52)。阿武隈川で毎年、生命をはぐくむドラマが繰り広げられる。
 同漁協は毎年2〜3月にサケの稚魚を阿武隈川に放流している。県の特別採捕許可を受けた組合員が遡上してきたサケを捕獲して卵を採り、同漁協がふ化させて放流する。許可を得ない一般の人がサケを捕獲することは水産資源保護法で禁止されており、阿武隈川水系に遡上したサケを捕獲することができるのは現在15人しかいない。
 サケは、川の水が汚れると生まれ故郷へ戻らない。堀江さんは「サケの遡上や川の魚を知ることは、郷土愛や環境保護につながる」と語る。
 同漁協は小学校を訪れ子どもたちにサケのふ化や稚魚放流、ヤマメの放流などの体験事業を行っている。命の大切さを学んでもらうとともに、水環境の重要性を幼いころから認識してもらうことが目的だ。
 阿武隈川にはサケのほかコイ、フナ、アユ、イワナ、ヤマメなど多くの魚が生息する。多種多様な生態系を保っているが、最近では全国と同様、外来魚の問題が浮上。国土交通省福島河川国道事務所河川担当副所長の佐々木秀明さん(54)は「ブラックバスに代表される外来魚によって阿武隈川の生物の多様性が失われる危険性がある。河川管理者として生態系を守ることも大きな仕事」と話す。
 外来魚はここ10年ほどでかなり増えたという。同事務所は4年前から、子どもたちと協力して外来魚を駆除する「バス・バスターズ事業」を開始。看板設置なども含め外来魚対策を進めている。
 「教えられなくてもいつの間にか知ることはたくさんある。阿武隈川にサケが遡上してくることも当然のように知ってもらえるようになれば」。堀江さんは阿武隈川から学んだ多くのことを子どもたちへ伝え続ける。
 


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