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産 業 中通り編
本宮市のアサヒビール福島工場。豊かな水がビール造りを支える
ふくしま発 水のあした
第1部 暮らし支えて【7】
2010年01月10日付
産 業 中通り編

ビールの味の決め手 安達太良山伏流水使用
 山々から生まれた水は、地域産業の発展を支えている。
 本宮市を流れる阿武隈川の支流五百川沿いにあるアサヒビール福島工場。高さ21メートルのタンクが170本も並ぶ。タンクの中身は発酵、熟成中のビール。ここで年間約37万キロリットルのビールが生産されている。大瓶で換算すると約5億8000万本で、東北6県と栃木、群馬、新潟3県の家庭や飲食店で愛飲者から親しまれている。
 ビールの主な原料は麦芽、ホップ、それに水。水はビールづくりに欠かせない原料だ。福島工場では、安達太良山の伏流水から芳醇(ほうじゅん)なビールが生まれる。醸造用の仕込み水は無色、無臭、透明。水に含まれるミネラルの量と質が麦汁の糖化や発酵を左右し、ビールの味覚をつくり出す。
 福島工場醸造部長の入江亮一さん(42)は「ビールをつくるためには、製造量の約6倍の水を使う」と話す。醸造用の仕込み水のほか、タンクや回収した瓶の洗浄などに大量の水が必要となる。以前は約9倍の水を必要としたというが、節水技術の進化により、大幅な使用量の削減に成功した。
 福島工場では年間200万キロロットルの水が使用されている。入江さんは、同社が本宮にビール工場を立地した理由について「交通の要所であることは当然だが、良い水が豊富にあることも大きい」と考えている。
 福島工場は毎日、出来上がったビールを専門の担当者が試飲する「官能検査」が行われている。自信を持って消費者にビールを届けるという意識と徹底した品質管理がトップメーカーの礎にある。入江さんも醸造部門の責任者として毎日2回、官能検査に臨む。味覚が鈍らないように空腹時に行われる。飲むビールの量は大瓶2本に相当する。入江さんは「ビールの味は奥が深い。日々格闘しているが手の内に入らない」と話す。
 福島工場には年間12万人の見学者が訪れる。ビールの製造工程を見学し、出来たてのビールの試飲を楽しむ。見学案内を担当する総務部チーフプロデューサーの丹治洋一さん(51)は、ビールを「自然の恵み」と表現する。
 福島工場の社員は毎年、猪苗代湖などで水環境の保全活動を続けている。水の大切さを実感しているからこその取り組みだ。
 


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