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海へ 浜通り編
浪江町津島地区を流れる請戸川。雪に覆われた阿武隈山地から太平洋へと注ぐ
ふくしま発 水のあした
第1部 暮らし支えて【8】
2010年1月29日付
海へ 浜通り編

水源の国有林に植林 森づくりに町民総参加
 阿武隈山地の山あい、浪江町西部の津島地区。厳冬期は雪に覆われる日も多い。東西に貫く国道114号に沿うように流れる請戸川の岩肌は凍り、水しぶきがつららとなる。川越しに臨む阿武隈の山々は雪で白く染まり、静寂の中で川音だけが響き渡る。
 津島地区では毎春、町民総参加で森をつくる森林ボランティア事業が行われている。請戸川源流ではぐくまれた栄養豊富な水が海に注ぎ、プランクトンを育て、豊かな海をつくるという思いが込められた活動だ。事業を担当する同町産業振興課長の根岸弘正さん(57)は「山の栄養分を海に届ける」と活動の意義を語る。
 森林ボランティア事業の歴史は1998(平成10)年までさかのぼる。毎年、子どもからお年寄りまで500人以上の町民がボランティアとして参加、請戸川の水源である国有林にケヤキやミズナラ、ヤマザクラなどの広葉樹の苗木を植林している。
 事業の当日になるとバスやマイカー数十台が連なり、植林する山を目指す。豊かな海や川の恩恵を受ける漁業関係者も網をスコップに換え、植林活動に汗を流す。これまでに植林した苗木は6万400本に上り、総参加者は4954人になった。
 森林ボランティア事業は、いまでは町のイベントとして定着した。町内の企業や団体に浸透し、一般町民が森づくりに参加するきっかけとなった。浪江青年会議所は年間活動の一つに位置付ける。同会議所理事長の横山秀明さん(34)は「阿武隈山系の緑を育て、豊かな海資源をつくる大切な取り組み。家族とのきずなづくりにもなる」と話す。毎年、リュックを背負い、わが子と手をつないで山頂を目指す会員もいるという。
 町内の立地企業の一つ、浪江日立化成工業も毎年参加している。同社総務課長の田中昌治さん(46)は「森づくりはCO削減につながる大切な活動で、きれいな水源をつくることで海もきれいになる」。同社は今年も、社員10人以上が参加する予定だ。
 中通りと浜通りを分ける阿武隈山地。浜通りの河川の水源を抱き、わき出した水が太平洋へと注ぐ。根岸さんたちは「水が豊かになれば海も豊かになる」と信じ、「水源の森林を守る取り組みが、多くの地域に広がってほしい」と願う。
 


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