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水産資源 浜通り編
ホシガレイの種苗研究に取り組む山野辺さん(右)と加藤さん。水がはぐくむ生命の神秘への挑戦は続く
ふくしま発 水のあした
第1部 暮らし支えて【10】
2010年1月31日付
水産資源 浜通り編

「幻の魚」安定漁獲へ ホシガレイ飼育に奮闘
 水がはぐくむ生命。川や海にすむ魚などの生き物は、貴重な水産資源でもある。水産資源を有効活用するための一つの取り組みが水産種苗の研究。本県では、大熊町の県水産種苗研究所でヒラメやウニ、アユなどの種苗研究が行われている。
 同研究所が現在最も力を入れるのが「ホシガレイ」の研究。ホシガレイはカレイ種の中でも非常に水揚げが少なく、「幻の魚」と言われる。2008(平成20)年の漁獲量は3.8トン。全漁獲量のわずか0.008%にすぎないが、1キロ当たりの平均単価は2800円と、マツカワやヒラメなどの高級魚を上回る。大型で成長が早く、高値で売買されるホシガレイの安定した水揚げは、本県の漁業経営安定化の「切り札」として期待されている。
 研究員の山野辺貴寛さん(26)は「単価が高い魚なので、漁業者のニーズと期待が大きい。漁業者からも励まされる」と期待を肌で感じている。
 同研究所がホシガレイの種苗研究を始めたのは1991年。いまでは、親魚からの採卵技術は国内屈指と言われるまでになった。09年は、相馬市の松川浦と浪江町の請戸漁港に2万6377匹を放流した。
 「ヒラメのように放流数や漁獲量が安定、事業化するまでは、道のりが遠い」と山野辺さんは研究の苦労を語る。卵がふ化した直後から30日間の初期生存率の低さが大きな壁という。ヒラメの初期生存率が50%なのに対し、ホシガレイは6%と、初期飼育期間に9割以上の稚魚が死んでしまうのが現状だ。山野辺さんの同僚の研究員加藤靖さん(51)は「放流の際の運搬でもヒラメと同じ方法では死んでしまう」とホシガレイ飼育の難しさを語る。
 毎年1月から5月までの初期飼育の時期になると、研究員は休日も交代で勤務し、稚魚の成育に神経をとがらせる。「寝ていても稚魚が全滅した夢を見て起きることがある」と山野辺さんは苦笑いする。稚魚にストレスはないか、水温や塩分、照明などの条件は適切かなど試行錯誤を繰り返す。
 今後も苦難の道が予想されるが、山野辺さんは「ホシガレイの元気な稚魚を育て漁業者に喜んでもらいたい」と前を見据える。水産資源を守り育てる取り組みが、本県漁業を支える。
 


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