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小名浜港 浜通り編
豊富な水産資源が水揚げされる小名浜港。海と共に生きる人たちが往来する
ふくしま発 水のあした
第1部 暮らし支えて【11】
2010年2月1日付
小名浜港 浜通り編

循環型の漁業が理想 十分な水深、強みを発揮
 海産物の物流拠点として長い歴史を持ついわき市の小名浜港。昨年11月、港にある小名浜魚市場で開かれた小名浜魚市場祭に長い列ができた。行列が求めるのは、いわき海星高生徒が練習船「福島丸」で捕獲し、初めて売りに出されたマグロ。同校では、年に3回、ハワイ沖に福島丸が出航、生徒たちが自然の厳しさを海から学び、研修する。
 生徒たちは片道2週間の海路を進んだ場所にある決められた海域で、長さ100キロもあるはえ縄を海に放つ。朝4時から2200個の針にサバなどの餌を付けて延々4時間の重労働だ。
 「初めて釣ったマグロは大きかった。釣っているとどれだけかかったか分からなくなるが、あとから見るとこんなに釣れたのかと驚く」。昨年9月から11月までの実習に参加した海洋工学科の石井敏暉さん(17)、渡辺大輔さん(17)は初めて釣り上げた感動を振り返る。日も沈んだころに釣り上げた171センチ、95キロの海の恵みだ。校長の鈴木則喜さん(57)は「研修から帰ってきた生徒にはたくましさを感じる。この経験は将来、漁業に進まなくても必ず役に立つはず」と話し、生徒の姿に目を細めた。
 人は海から多くの恩恵を享受しているが、水産資源は無限ではない。全国のマイワシの生産量は1980年代後半をピークに激減、かつての大衆魚は高級魚に変わった。
 300年の歴史を持つ同市の巻き網漁業「酢屋商店」社長の野崎哲さん(55)は小名浜港の優れたポイントとして「水深が十分にあり、大型漁船が安心して入港できることが強み」とインフラの良さを説明する。巻き網漁は4隻で一つの船団を組む形から1〜2隻の大型船で行うように漁の形態が変化しているという。
 野崎さんによると、この変化はコスト削減が大きな理由だが、母船が魚を取り続け別の運搬船がポンプ式で魚を運び続けるというこれまでのやり方と異なるため、水産資源の乱獲を防ぐ効果もあるといい、野崎さんは乱獲防止の点でも小名浜港のインフラが効果的だと指摘する。「水産資源を守りながらインフラの強みを港の活況につなげたい」と野崎さん。「自然の循環、再生産の中で漁獲が行われるのが理想。今後、小名浜港が脚光を浴びると信じている」と力強く語った。
 


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