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「夏井川」 浜通り編
夏井川のほぼ中央に位置する籠場の滝
ふくしま発 水のあした
第1部 暮らし支えて【14】
2010年2月5日付
「夏井川」 浜通り編

流域住民と密接関係 環境保護へ高まる意識
 田村市から小野町、いわき市を流れ、太平洋に注ぐ夏井川。春には桜前線が川の流れと逆行するように海側から山側へとさかのぼり、上流域の小野町では、夏井千本桜が景観を彩る。秋には切り立った夏井川渓谷を紅葉が真っ赤に染める。四季折々にさまざまな表情を見せる夏井川の水は、流域の生活用水や農業用水、発電などに利用され、市民の暮らしに欠かせない川として親しまれている。
 全長は67キロ。流域面積は約750平方キロに及び、県内の2級河川では最大。流域には発電所もあり、下流のいわき市では、最大規模の水道の取水源となっている。
 同市の水道の通水は大正時代に始まった。1906(明治39)年、平町(現・同市平)で大火事が発生、水不足で町が焼け野原となった。水道整備が急務との声が上がり1921(大正10)年に好間川を水源とした水道が整備され、1954(昭和29)年から夏井川が水源として使われ始めた。同市水道局によると市民の3割が夏井川の水を利用している。
 市民の暮らしを支える夏井川。水質をはじめ河川環境の整備に市民自らが取り組んでいる「夏井川流域住民による川づくり連絡会」代表世話人で福島高専名誉教授の橋本孝一さん(66)は「川の環境を変えるのは人。どのようにしたら子孫に自然の河川環境を残していけるのか。その思いで活動を続けている」と話す。
 夏井川は有数の観光地でもある。川沿いを走るJR磐越東線では毎年、ゴールデンウイークに一定区間で低速運転が行われる。車窓から乗客の目に映るのは、雄大な夏井川渓谷と壮大に広がるツツジの絶景だ。渓谷中流域では江戸時代に平藩主が、かごを止めて観賞したと言われる「籠場の滝」が勇壮な姿を表す。
 夏井川渓谷に注ぐ江田川沿いには、詩人草野心平が名付け親となった背戸峨廊もあり、春、秋の行楽シーズンには県内外から多くの観光客が夏井川渓谷に足を運ぶ。近くで商店を営み、長年観光客を迎えてきた兼本弘さん(91)によると「20、30年前と比べ、最近はごみの持ち帰りなどマナーが良くなっている」と笑顔を見せる。生活や観光など人々と密接にかかわる夏井川。兼本さんも「市民の川をずっと大切にしなければ」との思いを抱く。
 


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