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大内宿 会津編
街道の両脇に用水が流れる大内宿。集落の人々の暮らしを支える大切な水だ
ふくしま発 水のあした
第1部 暮らし支えて【21】
2010年2月13日付
大内宿 会津編

地域社会支える用水 毎月清掃し管理を徹底
 雪に包まれた下郷町の大内宿。かやぶきの民家が立ち並ぶ会津西街道の情景は、県内外から訪れた観光客を江戸時代の宿場町へと誘う。集落の人々が13日に開幕する「雪まつり」を控え、雪灯籠(とうろう)づくりに励む。街道の両脇には用水路があり、烏帽子岳を源とする清らかな伏流水が流れる。用水は田んぼに引かれているほか、野菜の水洗いや飲料水を冷やす天然の冷蔵庫などとして利用されてきた。昔から軒先の雪を流す場所であり、防火用水でもあった。人々は暮らしの中で用水の周りに集い、日々の出来事を語り合いながら、地域社会のきずなをはぐくんだ。
 大内区長の阿部智徳さん(65)は「用水が大内宿の暮らしを支えてきた。水道が通るまでは飲み水でもあった」と語る。大内宿は1981(昭和56)年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。集落の人々は江戸時代の宿場のまち並みを残すための努力を続けてきた。96年には景観を守るため、街道の舗装を外した。土ぼこりが心配されたが、用水の水で打ち水をした。用水の管理も徹底しており、月に1度、全世帯参加の清掃活動を実施している。副区長の吉村徳男さん(58)は「この水が汚れれば、自分たちの気持ちも汚れたように感じる」と水への思いを語る。
 吉村さんは45歳の時に町職員を退職し、かやぶき職人の道を志した。かやぶきは大内宿の景観の象徴であり、集落を守るための決断だった。「かやぶき職人が不在になることへの危機感があった」と吉村さんは振り返る。吉村さんは住民有志とともに、大内宿結いの会を結成、集落の若者にかやぶきの技術を伝える傍ら、忘れ去られつつあった年中行事を復活させた。正月に用水から水を汲(く)み、その水でお茶を飲んで家族の無病息災を願う「若水汲み」もその一つ。「大内宿の文化を大切にしたい」。吉村さんの思いだ。
 大内宿を昨年1年間に訪れた観光客は115万9千人。本県屈指の観光資源といえる。同町事業課商工観光係の佐藤寿一さん(53)も「大内宿は下郷の観光の柱」と誇る。大内宿は水や地域文化を守ることの大切さも訪れた人々に伝える。水にはぐくまれた大内宿に、会津の人々の豊かな営みが垣間見える。
(第1部おわり)
 


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