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羽鳥湖
農業用水を供給している人工湖の羽鳥湖。観光資源としても生かされている
ふくしま発 水のあした
第2部 共生の知恵【4】
2010年4月11日付
羽鳥湖

農業用水を安定供給 観光開発に大きな役割
 天栄村の中心部から西へ約15キロ、会津と中通りを隔てる分水嶺(れい)の山々に囲まれ、豊かな森と調和するようにたたずむ羽鳥湖。湖畔にはサイクリングロードやオートキャンプ場が整備され、観光シーズンには多くの観光客を迎える。羽鳥湖は農業用水専用として1956(昭和31)年に鶴沼川をダムでせき止めてできた人工湖で、農家の水不足の解消だけでなく、村内の観光開発にも大きな役割を果たしている。

 羽鳥湖から引く農業用水を利用しているのは須賀川市と白河市の旧大信村地区、鏡石、矢吹両町、天栄、中島、泉崎各村の2市2町3村。一帯は川の水量が乏しく、かつては「水争い」が起きていた。高台の地形のため、ダム建設以前は農家の人たちが、田んぼの下に流れる川を見つめて「水が欲しい」とつぶやいていたという。

 羽鳥湖の水利用は「西水東流」と呼ばれる。西の日本海に注ぐ阿賀野川水系の鶴沼川をせき止めた水は、約2キロのトンネルを通り、東の太平洋に注ぐ阿武隈川水系の隈戸川に流れ込む。西の水を東に流し、県南地域を潤す様子を表現した言葉だ。

 湖水は2市2町3村で3281ヘクタールの水田に潤いを与え、受益戸数は約2500戸に及ぶ。阿賀野川水系と阿武隈川水系にまたがることなどから県内唯一の農水省直轄管理ダムとなっている。阿武隈土地改良調査管理事務所羽鳥ダム管理所長の菅野敏仁さん(59)は、「ダムの完成によって、恒常的な用水不足が解消され、安定供給が実現した」と話す。

 羽鳥湖の恩恵は農業にとどまらない。菅野さんが「もともと環境の良い場所」という森に囲まれた羽鳥湖周辺では昭和40年代以降、民間によるゴルフ場や村によるスキー場の開発が進められた。時期を同じくしてこれらの施設の利用者を見込んだペンション造成が進み、官民一体となって「オールシーズン型」のリゾート地につくり上げられた。

 周辺一帯は大川羽鳥県立自然公園に指定されており、2006(平成18)年には天栄村が湖面利用権を取得、それまで湖内に立ち入ることができなかったが、今では遊覧ボートなどが楽しめるようになった。村産業振興課長の石井一美さん(56)は「羽鳥湖は村の観光の核」と胸を張る。
 


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