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平成の大改修
洪水で大きな被害を受けた須賀川市には浜尾遊水池が整備された
ふくしま発 水のあした
第2部 共生の知恵【5】
2010年4月13日付
平成の大改修

阿武隈川の治水強化 堤防や護岸整備進める
 須賀川市の阿武隈川沿いに、面積約62ヘクタールの浜尾遊水地が広がる。遊水地は、阿武隈川が増水した時の水の「受け皿」となる働きがある。1998(平成10)年8月から9月にかけた集中豪雨による洪水被害を受け、国が集中的に行った阿武隈川の河川改修の一つの成果だ。
 98年の集中豪雨では、増水した阿武隈川や支流がはんらん、須賀川市をはじめ上流の西郷村、白河市から下流の伊達市まで、流域では家屋の浸水や全半壊などの被害が相次いだ。支流の荒川では、堤防が100メートルにわたり崩れるなど甚大な被害をもたらし、戦後最大といわれる86年の「8・5水害」に匹敵した。
 当時、河川管理関係者の間では、8・5水害の規模の豪雨は60〜70年に1回の割合と考えられていたが8・5水害後、わずか12年で同規模の豪雨、洪水が発生したことで、国は集中的な投資による阿武隈川の大改修が必要と判断、3年度で総事業費800億円の予算が組まれ、すぐさま工事が始まった。「平成の大改修」と名付けられた総事業費800億円は、当時にすると40年間分の河川改修予算に値したという。
 伊達市梁川町五十沢で、農家を営む岡崎光さん(62)は大改修前、2回の浸水被害を受けた。栽培する桃の木が水をかぶり全滅するなど、荒れる川に悩まされ続けたが、改修後は洪水被害が全くなくなり、「大改修を経て安心して暮らせるようになった」と表情を緩ませる。
 大改修では、堤防や護岸、遊水地などの整備のほか、周辺の監視モニターや水量データなどの送受信のための光ファイバー網も整備した。堤防はコンクリートをむき出しにせず、草木をかぶせる多自然工法を採用した。
 阿武隈川を管理する国土交通省福島河川国道事務所工務第1課長の二瓶昭弘さん(47)は「大改修を契機に、川や堤防に対する地域住民の関心が高まったと感じる」と話す。治水機能の強化とともに環境へ配慮した整備手法などにより、「堤防の草刈りや河川敷のごみ拾いに積極的に協力する住民の姿が印象的」という。
 「川は時に牙をむく。一方で川の流れは癒やしの空間であり、それが普段の姿」と同事務所河川担当副所長の佐々木秀明さん(54)。「人にとって川というものは身近な存在です」と語り掛ける。
 


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