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摺上川ダム
水道用水やかんがい用水などに利用され、暮らしを支える摺上川ダムの水
ふくしま発 水のあした
第2部 共生の知恵【7】
2010年4月15日付
摺上川ダム

水質良く多目的利用 豊かな自然観光整備も
 福島市の中心部から北西に約20キロの飯坂町茂庭地区。摺上川上流の流れに沿って山あいの集落を抜けると、高さ105メートルの多目的ダム「摺上川ダム」が威容を誇る。年間8万〜9万人が見学や観光に訪れ、摺上川をせき止めるその壮大な姿を目に焼き付ける。
 摺上川ダムは、1971(昭和46)年に県が国に摺上川総合開発調査を要望、86年にダム建設の基本計画が告示され、建設計画スタート。以後、ダムに水没する地域の住民が移転するなどしながら工事が進められ、2006(平成18)年4月に運用を開始した。
 摺上川が注ぐ阿武隈川下流域の洪水調整機能を持つほか、県北地方に水道用水やかんがい用水、工業用水を供給する役割を担っている。また、渇水時の流量確保による自然環境保全など、さまざまな目的で活用されている。ダムを管理する国土交通省の摺上川ダム管理所長松井幸一さん(53)は「摺上川は暮らしに欠かせない命の水。利水者たちと連携し、安定供給に努めている」と話す。
 ダム建設に伴い、市は人づくりや環境づくり、文化・歴史づくりへの期待を込めた「郷生(きょうせい)の場づくり」をコンセプトにした周辺整備に着手。茂庭地区が豊かな自然景観を備え、飯坂温泉を訪れる観光客が気軽に足を運ぶことができる地域であることから、身近な観光・保養地として「摺上川を核とした、人と自然が共存した新しいふるさとの創出」を目指している。現在は温泉施設・もにわの湯、キャンプ場やバーべキュー広場、多目的運動場を備えた茂庭広瀬公園が完成、平日、休日問わず、来場者を迎える。
 人里離れた摺上山(するがさん)を源流とする摺上川は水質の良さに定評がある。摺上川ダムの水は飲料水として福島、伊達、二本松の3市、国見、桑折、川俣の3町で使われている。
 1日最大で24万9000立方メートルを供給できる。これは小学校の25メートルプール約692杯分に相当する量だ。
 「昔と比べ、水がおいしく変わった」と、ダムを見学に訪れた同市の後藤カネ子さん(68)。水道水が敬遠されがちな東京から帰省する娘たちも、実家では安心して水道水を利用しているという。ダムは市民の水への安心感も支えている。
 


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