水のあしたTOP
ホタルのすむ川
幻想的な黄緑色の光跡を描く産ケ沢川のホタル。地域住民の思いがホタルを守っている(夢ほたる・こおり提供)
ふくしま発 水のあした
第3部 命はぐくむ【1】
2010年7月24日付
ホタルのすむ川

生息環境を整え復活 守り育てる心受け継ぐ
 「酸素がなくても生きられる生物はいるが、水なしで生きられる生物はいない」。県内の水生生物などを調査・研究する福島大共生システム理工学類准教授の塘忠顕さん(43)は、水と生物とのかかわりを語る。「水のきれいな清流だけに動植物が生育するわけではない。生活排水が混じる河川にも豊かな生態系が広がる」。塘さんは、生物にはそれぞれに適応した水環境があることを説く。
 夏を代表する水生昆虫のホタル。淡い光を放ちながら飛び交う光景は、里山の風物詩でもあった。人が暮らす環境の中で生息してきたが、河川改修や農薬散布などの影響で生息域が限られた昆虫となった。塘さんは「人間による必要以上の環境負荷が生態を脅かす」と語る。
 桑折町を流れる阿武隈川支流の産ケ沢川では、1994(平成6)年に完了した河川改修の影響でホタルの数が激減。96年ごろから住民有志によるホタル復活に向けた取り組みが始まった。中心的な役割を果たしたのが「桑折町螢保存会」。ホタルのえさとなる巻き貝のカワニナを放し水路点検などを定期的に行い、ホタルが戻る日を待った。
 カワニナが増え、コンクリートで固められた川に徐々に土砂が積み重なり草木も生えた。ホタルが生息できる環境が整い、2003年ごろから川面を飛び交うホタルの姿を見られるようになった。保存会の佐藤茂さん(61)は「ホタルは光をいやがるので発生時期は地域の防犯灯を消灯した」などと活動を振り返る。
 戻ってきたホタルを守る活動の輪が広がり、地元小学校のPTA役員を中心に保護団体「夢ほたる・こおり」が05年に結成された。現在は夢ほたるが上流域、螢保存会が中流域で保護活動を担っている。夢ほたるは毎年、ホタルの幼虫の放流を続け、放流活動には多くの子どもたちも参加する。「子どもたちを参加させることでホタルを守る人も育てたい」。事務局長の阿部公嗣さん(49)は思いを語る。ホタルを守り、育てる心が受け継がれる。
 


〒960-8648 福島県福島市柳町4の29
ネットワーク上の著作権(日本新聞協会)
国内外のニュースは共同通信社の配信を受けています。

このサイトに記載された記事及び画像の無断転載を禁じます。copyright(c) 2001-2004 THE FUKUSHIMA MINYU SHIMBUN