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マダラナニワトンボ
マダラナニワトンボの雄。会津地方で静かに息づいている
ふくしま発 水のあした
第3部 命はぐくむ【3】
2010年7月26日付
マダラナニワトンボ

湿地に守り育てられ 新生息地の確認相次ぐ
 絶滅のおそれがある生物などをまとめた環境省、県のレッドデータブックで「絶滅危惧(きぐ)T種」に指定されているマダラナニワトンボが会津地方で生息する。限られた条件で生きるマダラナニワトンボは、命をたたえる湿地に守り育てられている。
 昨年秋、福島虫の会会員の三田村敏正さん(50)と横井直人さん(54)が会津地方で新たな生息地を確認、会報「ふくしまの虫」に報告し、希少な生き物が静かに息づいていることが判明した。マダラナニワトンボは本州のみに分布し、水中から根を張るような植物が茂る浅い沼地に生息する。開発の影響や、時間の経過によって自然に起こる環境変化などの要因で湿地が減少し、すみかが減っているが、県内ではこれまで会津若松市と磐梯町で生息が確認されていた。
 新たにマダラナニワトンボが発見されたのは南会津町の宮床湿原、昭和村の矢の原湿原、会津若松市の会津レクリエーション公園の3カ所。
 絶滅危惧種の生息地が相次いで発見されたことはそれだけでも光明をもたらしているが、中でも同公園の人工池で確認されたことは「大きな意味を持つ」と三田村さんは指摘する。同公園は、これまでもマダラナニワトンボが見つかっている同市の赤井谷地湿原から東に約1.5キロに位置する。赤井谷地のマダラナニワトンボが広がった可能性があり、三田村さんは「今回、人の手が加えられてできた場所で生息が確認された。絶滅危惧種は環境変化に弱いから減っているが、環境さえ整えばどんどん増えていく可能性があることを示している」と分析している。
 宮床湿原は南会津町指定の天然記念物。木道が整備されていて湿原内の探索が可能だが、生物の採集は禁止されており、学術調査で許可を得た場合にのみ可能だ。「宮床湿原は町の財産」と、南会津町生涯学習課の渡辺徹さん(52)。マダラナニワトンボが見つかったことによる知名度アップを期待する。「マイナーな場所のためか、訪れる人には環境意識の高い人が多いと思う」とする一方、「ごく一部、風景撮影の際にカメラの三脚で湿原が傷められることもある」という。渡辺さんは「貴重な自然が荒れることなく、後世につながなくてはならない」。
 


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