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地域住民の努力が実り、年々水質が改善している白河市の南湖。ジュンサイが復活するなど豊かな水環境が生態系の命を紡ぐ
ふくしま発 水のあした
第3部 命はぐくむ【4】
2010年7月27日付
南湖の生態系

ジュンサイ発芽復活 市民参加で水質を浄化
 猛暑が続く中、涼を求める家族連れらでにぎわう白河市の国史跡名勝・県立公園「南湖」。阿武隈川水系の谷津田川から流れ込む水と、湖底からわき出る水をたたえる。湖面には水生植物のコウホネが黄色い花を咲かせ、訪れた人々の心を癒やす。公園の広さは、約17ヘクタールの湖面を含め約38ヘクタール。ここに約350種の動植物が生息している。
 動植物の命をはぐくんでいる南湖の恵まれた水環境も、これまでに幾度となく危機に直面してきた。
 湖の西側には1950年代まで、湿地帯が広がっていた。サギソウなどの希少な植物が見られたが、ほ場整備などにより、湿地帯は姿を消した。1982(昭和57)年の東北新幹線開通などを契機に上流部で都市化が進み、生活排水の流入により水質悪化が進んだ。90年代に入ると湖面からの異臭がひどくなった。
 水質悪化と同時に外来植物のコカナダモなどが湖面を覆い、外来魚のブラックバスなどが在来の生態系を脅かした。環境団体などによる浄化活動は行われたが、環境の悪化に歯止めがかからず、南湖の水を管理する社川沿岸土地改良区と同市は打開策を決断。2002年12月、南湖の水を抜く「池干し」を38年ぶりに実施し、汚れた水を抜き、外来生物を駆除した。
 毎年12月の池干しは恒例行事として定着、当初50人程度だった参加者が昨年500人を超えた。市都市計画課歴史まちづくり室長の佐川庄司さん(53)は「ボランティアの方々と上流部の住宅地を歩き、生活排水を川に流さないよう下水道への入会を求めた」と振り返る。
 昨年10月には南湖で12年ぶりとなる水生植物のジュンサイの発芽が確認された。芽が食用になるジュンサイの復活に、南湖の生態系を研究する福島大共生システム理工学類准教授の黒沢高秀さん(45)は「土中に残っていたジュンサイの種が自然に発芽した。水質が良くなったことで発芽の条件が整った」と話す。
 1801(享和元)年に白河藩主松平定信公によって造営された南湖は当時から、身分を超えて庶民の憩いの場として開放された。庶民は率先して下草刈りや落ち葉拾いなどを行ったという。ボランティアで水質浄化に励む市民の姿に、南湖を大切に思う「心の糸」が紡がれている。
 


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