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清流のシンボル
清流のシンボルとされるイトヨ。喜多方市の魚として市民に親しまれている(喜多方市提供)
ふくしま発 水のあした
第3部 命はぐくむ【5】
2010年7月28日付
清流のシンボル

イトヨ守る輪広がる 湧水量減少募る危機感
 喜多方市の天然記念物で市の魚にも指定されているトゲウオ科のイトヨ。水質汚濁に敏感で、水温や水量の環境変化にも弱く、清流のシンボルとされている。喜多方市をはじめ会津地方で生息が確認されている陸封型のイトヨは県の「レッドデータブックふくしま」で絶滅危惧(きぐ)U類に分類される希少な魚だ。
 同市では、押切川公園体育館前のイトヨ池などわずかな場所で生息している。背びれに三本のトゲを持つことから、昔から地元住民の間で「トゲチョ」の愛称で親しまれてきた。
 希少魚であるイトヨの生態調査や保全に取り組むのが、「会津イトヨ研究会」。1978(昭和53)年に結成し、イトヨの生息状況や環境などの調査を実施するとともに、希少生物保存推進にかかわる本の発刊や発表などを行ってきた。希少動物の保護と自然環境保全の普及啓発に尽力したとして今年4月、同研究会の代表を務めた山中実さん(82)が環境省の自然環境功労者大臣表彰を受けた。
 結成当初から活動を行ってきた山中さんは「イトヨは昔、どこにでもいる魚で珍しくはなかった」と振り返る。同市で小学校の教員を務めていた山中さんとイトヨとの出会いは、児童が背びれにトゲを持った魚を空き缶に入れて教室に持ち込んできたことから始まった。「この魚、おじいちゃんはトゲチョと言っていますが、正しい名前はなんですか」。子どもたちと魚の名前を調べる中で、わき水の池にすみ水質に敏感な魚ということを知った。
 山中さんは「イトヨが喜多方に生息するのは、飯豊山の豊富な伏流水があるからこそ」と強調する。
 同市ではイトヨのすむ環境を守ろうと、多くの市民が活動の輪を広げている。喜多方ロータリークラブは数年前から、イトヨ池の清掃作業を行い、市のシンボルを守る活動を続けている。
 一方で、道路整備や区画整理などにより地面がアスファルトやコンクリートで固められ、雨水が地下にしみ込まなくなったことや水質の変化などで、イトヨの数や分布場所は年々減少しているとの指摘も挙がる。山中さんは「湧水(ゆうすい)量の減少が問題。生き物に対する配慮がない」と話し、イトヨの生息に危機感を募らせている。
 


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