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県内で生息域を拡大しているフロリダマミズヨコエビ。生態系への影響が懸念される(塘忠顕福島大共生システム理工学類准教授提供)
ふくしま発 水のあした
第3部 命はぐくむ【6】
2010年7月29日付
外来生物の脅威

在来種生息域が縮小 健全な環境構築が必要
 多様な生物が生息する水環境は、在来生物ばかりではなく、ほかの地域から持ち込まれた外来生物にとっても恵まれた環境と言える。県内の河川や湖沼でもブラックバスやブルーギル、アメリカナマズなど「外国原産」の生物が、もとからある水辺の生態系に影響を与えている。
 「福島の水辺はどのような生物が生息していれば健全なのか、将来に残したい水環境は何かを、県民一人一人が考える必要がある」。南相馬市博物館の学芸員稲葉修さん(43)は、外来生物が生息域を広げる県内の水環境の現状に警鐘を鳴らす。
 稲葉さんの調査によると、同市小高区の水路でドジョウの生態を調べたところ、1990年代は対象の100匹すべてが在来のドジョウだったのに対し、2000年代の調査では在来は100匹中2匹のみで、残り98匹は中国や朝鮮半島原産のカラドジョウだった。稲葉さんは「在来のドジョウが減少した原因は分からないが、在来種がいなくなることで生態系のバランスが崩れる恐れがある」と話す。
 体長1a程度の薄い青色のフロリダマミズヨコエビも急速に生息域を広げている。原産国はアメリカ南東部。1989(平成元)年に茨城県の利根川水系で国内で初めて確認されて以降、同心円状に生息域を拡大、現在は南は九州北部、北は北海道まで生息域を広げた。県内では福島大共生システム理工学類准教授の塘忠顕さん(43)の研究グループが2003年に福島市などの阿武隈川で発見、現在は阿武隈川本流全域のほか阿賀川でも生息が確認されている。
 在来のヨコエビは低温で水がきれいな清流などに生息する。フロリダマミズヨコエビは水温が高く汚れた水にも適応できるという。塘さんは「繁殖力が強く低水温にも対応できる。このまま生息域を広げると、30年以内に在来のヨコエビが生息する支流にも拡大する」と危ぶむ。繁殖力が劣る在来種の生息域が狭まり、いずれは在来種がいなくなる可能性があるという。
 塘さんによると、フロリダマミズヨコエビの存在を知る県民はごく一部で、具体的な影響が分からない中で駆除などの対応は後手に回っている。塘さんは「ペットを捨てないことや川を汚さないことなど外来生物を居着かせない努力が求められる」と話す。
 


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