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尾瀬沼西岸の沼尻平に広がる草紅葉。池塘に浮かぶヒツジグサも紅葉で色付き、尾瀬は秋一色を迎えている=5日撮影
ふくしま発 水のあした
第4部 豊かさを守る【2】
2010年10月11日付
尾瀬への思い

守るべき大事な場所 多くの人が調査や研究
 赤や黄色に彩られた山々に囲まれた湿原に草紅葉がじゅうたんのように広がる尾瀬ケ原。白いレールのように続く木道の脇でエゾリンドウが紫色の花を咲かせ、草紅葉の中に点在する大小の池塘(ちとう)に浮かぶヒツジグサも色付く。ハイカーは秋の尾瀬の情景を目に焼き付ける。
 「昔はこの池塘はもっと水量があった。水が減った理由は分からないが、乾燥化が進んでいるのかもしれない」。約50年間にわたり尾瀬ケ原の見晴地区(桧枝岐村)で山小屋を営む星光さん(65)は、同地区から約200メートルほど西側の2つの木道に挟まれた池塘を見つめながらつぶやく。
 星さんが水量の減少を指摘した池塘には、堆積(たいせき)した泥炭の上に植物が生い茂り、初めて訪れた人は見つけにくい。星さんによると、5年ほど前までは夜空の満月が水鏡に映るほどの水量があったという。
 見晴地区の山小屋前にはヨシの植生があり、木道沿いにも所々で見ることができる。「最近まで、ヨシはこんなに多くなかった。徐々に山小屋方向から尾瀬ケ原に押し寄せているようだ」。星さんは木道を歩きながら、自然環境の変化を心配する。
 尾瀬の自然について温暖化による生態系の変化や降雪量の減少、シカの急増など、専門家や関係者から自然環境の変化を指摘する声がある。尾瀬で乾燥化が進んでいることについては、泥炭層が変化したことで水量が減ったとの見解もある。それだけ、多くの人が尾瀬の環境を守るための調査や研究に取り組んでいる証しでもある。
 尾瀬では「ゴミ持ち帰り運動」や「マイカー乗り入れ規制」などが実践され、日本の自然保護活動の原点と言われる。湿原の土壌環境や生物多様性などを研究する北海道大北方生物圏フィールド科学センター准教授の冨士田裕子さん(53)は「尾瀬の湿原や周囲の山々は手つかずで人為的な影響はない。ルールもしっかり守られている」と尾瀬の自然保護活動を評価する。
 尾瀬では毎年7月に「尾瀬子どもサミット」が開かれ、福島、群馬、新潟3県の児童・生徒に対し、環境保全活動の大切さや、自然と人とのかかわり方などを伝えている。長年尾瀬を見守ってきた星さんは「守るべき大事な場所」と尾瀬を例える。
 


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