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猪苗代湖の危機
近年、猪苗代湖の水質悪化が進行。自然の浄化作用にかげりが見えている
ふくしま発 水のあした
第4部 豊かさを守る【4】
2010年10月14日付
猪苗代湖の危機

水質悪化の懸念強く 改善へ向け機運高まる
 猪苗代湖の湖水の水質は、2002(平成14)年度から4年連続で環境省の全国湖沼水質ランキング1位を記録した。日本一のきれいな水をたたえる猪苗代湖。それが、09年度の水質調査結果ではランク外になることが確定、水質汚濁の懸念が高まっている。
 同省の09年度調査で猪苗代湖の水質は、汚濁の代表的な指標で、水中に含まれる有機物の消費酸素量を示す化学的酸素要求量(COD)がランキング3位相当の結果となったが、大腸菌群が基準値を超えたため、ランキングから外れることになった。
 県などによると、猪苗代湖はもともと、自然の浄化作用できれいな水質を保ってきたという。酸性の中ノ沢温泉などの源泉が岩石の鉄分を溶かし、猪苗代湖に注ぐ長瀬川と合流した際に鉄分の塊となる。この塊が植物の栄養源となる有機物のリンを吸着する。このため湖の有機物が少なくなり、CODが低く抑えられてきた。
 猪苗代湖の水質に詳しい日大名誉教授で同大工学部上席研究員の中村玄正さん(68)は、この仕組みを「世界自然遺産に値する」と高く評価する。
 県が行っている水質調査では、猪苗代湖の水質悪化が年々進行していることが数値で示されている。1996年から湖水の酸性が弱まって中性化が進み、CODは2002年から増加傾向を示す。大腸菌群は05年から増え、06、07年は環境基準を超えて全国ランク外の要因となった。
 水質悪化の原因については諸説あるが、自然の浄化作用を担ってきた酸性の水の流入が減っているとも言われ、また、枯れた水生植物が有機物となり、CODが上昇しているとも指摘される。これらに水温上昇が加わり、大腸菌群数が高い値で残存しているという。県水・大気環境課長の猪狩良彦さん(58)は「右肩上がりで水質が悪くなっている。湖沼は一度汚れると回復は難しい」と話し、猪苗代湖の現状に危機感を抱く。
 「清らかな湖、美しい猪苗代湖の水環境研究協議会」の会長も務める中村さんは、水質調査や除草活動などを広く呼び掛けている。県をはじめ民間のさまざまな団体で「水質日本一の猪苗代湖」を取り戻そうという機運が高まりをみせ、水質改善へ向けた「挑戦」が始まっている。
 


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