水のあしたTOP
発電
水資源の新たな利用法を開拓した中川さん。「エネルギーの有効利用が必要」と語る
ふくしま発 水のあした
第5部 恵みの源【3】
2010年12月14日付
発電

「小水力」の普及期待 農業用水路新たな利用
 高低差が重要な水力発電の常識を覆し、落差が少ない農業用水路を使って発電する「小水力発電」が新たなエネルギーの仕組みとして注目されている。県は策定を進めている「県再生可能エネルギー推進ビジョン(仮称)」の導入促進エネルギーの中核に小水力発電を盛り込む方針で、来年度以降、本県の豊かな水環境に適応した新エネルギーとして県内全域での普及を目指す。
 水力発電の基本的な原理は、水の落下や水流による力で発電機を回転させて電気をつくる仕組み。一般的には、落差をつけて勢いよく水を落とし、発電機を回すイメージだが、小水力発電は、数メートル程度のわずかな落差でも電気を生み出すことができる。県内でも県管理の東山ダム(会津若松市)などで導入、県エネルギー課は「具体的な利用方法は今後の検討課題だが、これまで利用されなかったエネルギーを掘り起こし、活用することに意義がある」と期待を込める。
 新たな再生エネルギーとして注目される小水力発電の先駆者的な企業が県内にある。福島市飯野町の中川水力が2004(平成16)年に開発したマイクロ水力発電は、これまでは考えられなかった農業用水路での発電を実現、水資源の新たな利用法を示した。
 出力が1000キロワット以下が小水力発電、100キロワット以下がマイクロ水力発電と呼ばれる。小水力・マイクロ水力発電は「技術屋」としての飽くなき探求心から生まれた。水の落差が大きい場所ではすでに発電所の開発が進んでいるため、社長の中川彰さん(76)は農業用水路に目を付けた。水流に影響を与えないような配慮もなされている。
 環境に優しい発電を可能にする同社の製品は県外でも活躍する。富山県では立山連峰から流れる豊かな水を利用することで地球温暖化防止に貢献しようと、昨年12月に県営として全国初の農業用水路を利用した発電所を建設。年間供給電力量は350万キロワットで、この発電力を石油火力発電と置き換えた場合、2600トンの二酸化炭素を削減することになるという。
 現在、同社では1メートル以下の落差での発電を実験中。中川さんは「水が電気に変わる様子は魔法みたいなもの。資源のない日本では自然のエネルギーを有効に利用しなくてはならない」と目を輝かせる
 


〒960-8648 福島県福島市柳町4の29
ネットワーク上の著作権(日本新聞協会)
国内外のニュースは共同通信社の配信を受けています。

このサイトに記載された記事及び画像の無断転載を禁じます。copyright(c) 2001-2004 THE FUKUSHIMA MINYU SHIMBUN