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水資源がまちづくりの柱を担う。喜多方市の地下水減少の原因を解明するため、地下水の水位を調べるネットワーク会員の福大生ら
ふくしま発 水のあした
第5部 恵みの源【5】
2010年12月16日付
水のまちづくり

湧き水復活計画進む 産学官民が連携で活動
 本県の豊かな水資源は、まちづくりを支えてきた。安積疏水は郡山市に発展をもたらし、阿武隈川の源流がある西郷村では、源流の里づくりが進められている。国は水を生かしたまちづくりの優れた成果を「水の郷百選」に認定しており、本県からは両市町のほか、ブナの原生林を守る只見町が選ばれるなど、地域の水資源がまちづくりの核として大きな役割を担っている。
 飯豊山の伏流水が蓄えられる会津盆地。地下水は、市民生活をはじめ会津地方のコメや酒づくりに欠かせない。農業以外の産業でも広く利用されているが、喜多方市では近年、湧き水が流れていた水路が枯れるなど、地下水の減少が進んでいるという。同市では、昭和中期ごろまでは、至る所で湧き水が流れ、旧市街地では飲料水に利用されたり、道路脇のせせらぎが市民の心を潤していた。
 地下水盆管理学が専門の福島大教授の柴崎直明さん(49)は「蓄えられる量よりも、出ていく量が増えている」と話す。地下水減少の原因について柴崎さんは、市街地が広がりアスファルト整備が進み、雨水が地下に浸透する量が少なくなっていること、河川改修の影響で川から入る水が減ったこと、地下水を利用する消雪用の水量が増えていることなどを指摘する。
 同市では、かつての「水の都」を再生しようと、産学官民が連携した「きたかた清水ネットワーク」が、湧き水を市民の目に見える形で復活させ、水に対する市民の意識、関心を高めるための計画を進めている。
 「豊かな水環境は、暮らしていく上で、幸せとゆとりをもたらす」と同ネットワーク事務局の江花圭司さん(35)。ネットワークは、冬期間も田んぼに水を張り、地下水のかん養を促進させる「冬水田んぼ」の見学会を開催したほか、今後は湧き水活用に関する市民への「覚書」の作成や、同大の学生の提案で湧き水を巡る「湧水ウオーク」実施に向けた準備を整えている。
 柴崎さんもネットワークの会員の一人だ。柴崎さんは「地下水は、われわれの足元にある共有の財産。資源として価値のあるものだから、バランスのとれた活用が大切」と話す。豊富な水に支えられてきた地域で、水資源の価値をあらためて見直そうという機運が高まっている。
 


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