放射性ヨウ素の服用治療

 

 甲状腺は、首の真ん中からやや下(のどぼとけの下)にある、10~20グラムぐらいの小さなチョウの形をした臓器です。

 甲状腺の一部にしこりができる病気のうち、悪性のものができることを甲状腺がんといいます。放射線と関係する甲状腺がんの多くは「乳頭がん」と呼ばれる種類のがんです。甲状腺乳頭がんの治療の基本は手術です。

 その一方、手術以外の治療法に、放射性ヨウ素を含んだカプセルを飲むという方法があります。

 私たちの甲状腺は(放射性物質ではない)通常のヨウ素を材料として、新陳代謝をつかさどるホルモンを作っています。身体は、通常のヨウ素と放射性ヨウ素を区別することができないため、放射性ヨウ素が身体に入ると、それが甲状腺や、それによく似た甲状腺がん自身に取り込まれます。そして、甲状腺がんに取り込まれた放射性ヨウ素から放射線が出て、間近のがん細胞を攻撃することができます。

 その後、放射性ヨウ素は短い半減期とともに減り、身体から排せつされます。

 実際に治療で用いられる放射性ヨウ素の量は、今回の原発事故でまき散らされて、1人の身体に入ったかもしれない放射性ヨウ素の量よりも桁違いに多いことが分かっています。ただ、この放射性ヨウ素を用いた治療の仕組み自体は、原発事故直後に起こったことと同じです。