服用治療、通常ヨウ素制限

 

 甲状腺乳頭がんの治療の基本は手術ですが、その手術後に行う治療として、放射性ヨウ素を含んだカプセルを飲むという方法があります。

 身体は、通常のヨウ素と放射性ヨウ素を区別することができません。そのため、放射性ヨウ素が身体に入ると、それが甲状腺や、それによく似た甲状腺がん自身に取り込まれ、周辺のがん細胞を攻撃します。

 この治療は、身体の中に通常のヨウ素がたくさんあるとうまくいきません。なぜなら、通常のヨウ素がたくさんあると、身体はそれ以上のヨウ素が不要なので、治療のための放射性ヨウ素が身体の中に取り込まれないからです。

 そのため、放射性ヨウ素カプセルによる治療を行う前には、1~2週の間、食事から通常のヨウ素をたくさん含む食事を制限する必要があります。昆布などの海藻をはじめとして、日本でわれわれが食べる食事には大なり小なり通常のヨウ素が含まれているからです。

 食事からの通常のヨウ素をしっかり制限しないと、放射性ヨウ素による治療の効果が弱まってしまう。このことは、裏を返せば、日本の食事は通常のヨウ素が多く、今回の原発事故時の放射性ヨウ素を取り込みづらくする影響を持っていたということにもなります。これはチェルノブイリ原発事故と大きく異なる点の一つです。