周囲の支え、健康成り立つ

 

 今回の原発事故による放射線被ばく量とその健康影響について、今年3月に国連の委員会(UNSCEAR)から、最新の報告書が発表され、放射線被ばくに伴ったがん増加の可能性は低いと報告されました。

 この10年間、原発事故に伴う健康の課題について考えるとき、私たちが経験してきたことは、放射線のことはもちろん重要だけれども、その一方で精神的な影響や生活環境が変わることによる生活習慣病などの影響も甚大であるということ。片方だけに偏ることなく、両方の対策をしっかり行っていくことが重要ということでした。

 運動をしなくなって生活習慣病が悪化したとか、人と接しなくなって落ち込むことが増えた、といった「個人」に関係することだけではなく、病院などへのアクセスが悪くなっていたり、家族からのサポートが受けづらくなっていたりと、私たちの健康は「周り」からの支えによって成り立っています。何か一つのリスクだけに集中してしまうと、全体として健康を守るつもりが、結果的にバランスを崩すことがあり得ます。

 このようなことは原発事故に特有のことではなく、これまでもアメリカの大型台風(ハリケーン)によって大きな被害を受けた地域でも全く同じことが報告されています。そして、その状況は新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう現在も同様です。