傷つくと合成順が「混乱」

 

 DNA(ディーエヌエー)は生物が生きていくために必要な全ての設計図の原本を集めた、巨大な辞典のような役割を持っています。A・T・G・Cという四つの文字だけを並べることによって書かれた暗号のような辞典です。

 そして、このA・T・G・Cの文字が三つ並ぶと、その3文字のセットが、一つの「アミノ酸」に対応していました。そのアミノ酸を組み合わせて、私たちはタンパク質を作っていきます。

 ただ、A・T・G・Cの文字が1列に並んでいるわけですから、どこから3文字のセットとしてこの暗号を読んでいけばよいか分かりません。そのために、3文字のセットの中には、ここからアミノ酸の合成を開始する(ここから読み始める)というスタートの意味を持つ3文字のセットや、ここでアミノ酸の合成を終了する(ここで読み終わる)というストップの意味を持つ3文字のセットも存在します。

 そのため、例えば放射線によってDNAに傷がつき、A・T・G・Cの文字が入れ替わってしまう場合、作られるタンパク質の一部のアミノ酸の種類が変わってしまったり、どこから読むか分からなくなったり、途中でタンパク質を作らなくなったりということが起こってしまうのです。