紙一枚で止まるベータ線

 

 廃炉作業が進められている原発周囲の敷地内タンクには、放射性の水素である「トリチウム」が保管されています。トリチウムは最も軽い元素である水素の仲間です。

 トリチウムは放射性物質なので、放射線を出しますが、非常にエネルギーの小さいベータ線を出すことが知られています。エネルギーはセシウム137が出すベータ線の100分の1程度です。

 エネルギーが小さいため、ほかの放射性物質から出るベータ線と比べて飛ぶことができません。空気中では1センチも進むことができません。水の中ではさらに進めず、最大で数マイクロメートル(1マイクロメートル=1メートルの100万分の1)しか透過できません。アルファ線と同じく、紙一枚でも止まってしまいます。ちなみに半減期は12年ほどです。

 そのため、トリチウムによる健康影響については、体の外から放射線を浴びる外部被ばくは問題とならず、あったとしても内部被ばくとなります。しかし、口から取り込んだ際の体への影響についても、トリチウムはセシウムと比較してもかなり小さく、1ベクレル当たりの体への影響は、どの年代でも数百分の1です。