自然界でも作られる物質

 

 廃炉作業が進められている原発周囲の敷地内タンクには、放射性の水素である「トリチウム」が保管されています。トリチウムは最も軽い元素である水素の仲間です。

 トリチウムは、核実験や原子力施設で作られる人工の放射性物質である一方、自然界で作られる天然の放射性物質でもあります。宇宙から飛んでくる放射線の一種である宇宙線が、大気中の窒素や酸素と反応して作られます。

 天然由来のトリチウムは、大気の上層において世界中で年間に合計約7京2千兆ベクレル作られます。その一方、1990年代後半のデータでは、世界中の原子力発電所から年間に約1京4千兆ベクレルのトリチウムが放出されていました。世界中の原子力発電所では、合計で天然由来に作られるトリチウムの約20%を放出していたということになります。

 ちなみに東京電力福島第1原発事故前、日本の原子力発電所からは、年間に合計で約380兆ベクレルのトリチウムが放出されていました。その一方、日本全国で雨に含まれるトリチウムは年間で約220兆ベクレルです。日本の原発からのトリチウムの放出量は、世界中で作られる天然由来のトリチウムの100分の1以下であり、そして日本全国の雨に含まれる量の約1.7倍でした。