核実験のトリチウム残存

 

 廃炉作業が進められている原発周囲の敷地内タンクには、放射性の水素である「トリチウム」が保管されています。トリチウムは、核実験や原子力施設で作られる人工の放射性物質である一方、自然界で作られる天然の放射性物質でもあります。

 天然由来のトリチウムは、大気の上層において、宇宙から飛んでくる放射線である宇宙線と、大気中の窒素や酸素が反応して作られます。トリチウムは世界中の原子力発電所から毎年放出されていたわけですが、その約5倍が毎年自然界で作られるトリチウムでした。

 しかし、地球全体を見ると、もっとたくさんのトリチウムが作られていた原因があります。それは、1950~60年代ごろに多く行われた、大気圏内の核実験です。数百回以上行われた核実験によって、その当時、自然界で作られるトリチウムの「数千年分」が大気中にばらまかれたことが知られています。

 トリチウムの半減期は約12年ですので、核実験の後、減ってはいますが、それでもまだ、自然界で作られるトリチウムの100年分程度が残存しています。