代謝や排せつにより排出

 

 廃炉作業が進められている原発周囲の敷地内タンクには、放射性の水素である「トリチウム」が保管されています。トリチウムは、核実験や原子力施設で作られる人工の放射性物質である一方、自然界で作られる天然の放射性物質でもあります。

 天然と人工、さまざまな形で作られたトリチウムが地球上には存在していますが、1950~60年代ごろに多く行われた、大気圏内の核実験によって、自然界で作られるトリチウムの「数千年分」が大気中にばらまかれたことが知られています。トリチウムの半減期は約12年ですので、60年たてば、おおよそ30分の1に減ったことになります。

 その一方、トリチウムが体内に入った場合、数十年も体にとどまることはありません。体に入ったトリチウムは、その形にもよりますが、おおよそ10日で半分になります。トリチウムの多くが水の形で存在するため、通常の水素でできた水と同じく、代謝や排せつによって入れ替わるということです。

 これはセシウムの半減期が、例えばセシウム137なら約30年であるのに対して、体の中に入ったセシウムはおおよそ100日で半分になることと似ています。体内に永久にとどまり続けて放射線を出し続けるというものではありません。