原子炉の形で違う発生量

 

 廃炉作業が進められている原発周囲の敷地内タンクには、放射性の水素である「トリチウム」が保管されています。トリチウムは最も軽い元素である水素の仲間です。トリチウムは、核実験や原子力施設で作られる人工の放射性物質である一方、自然界で作られる天然の放射性物質でもあります。

 原発では燃料にウラン235を使います。このウランが「核分裂」するときのエネルギーを用いて、水を沸騰させ、タービンを回して電気をつくっています。原子炉の中ではこの電気をつくる反応を起こしている途中に、さまざまな過程でトリチウムができるのでした。そして、原発でできたトリチウムは基準値を確認し、主に海へ放出されていました。

 その一方、原発の原子炉の形は、専門用語でPWRとかBWRとか言って、世界中でいくつかの種類があります。原子炉の形によって、電気をつくる反応の起こし方が異なります。そのためトリチウムの発生量が異なり、放出されるトリチウムの量が原子炉の形によって、数十倍から数百倍異なることが知られています。

 今回の原発事故前のデータですが、福島第1原発から放出していた量の10倍以上のトリチウムを海洋放出していた国内の原発もあれば、日本の全ての原子力施設からの放出量の合計を超えるトリチウムを放出していた北米の原発もあることが知られています。