トリチウム、雨水の中にも

 

 廃炉作業が進められている原発周囲の敷地内タンクには、放射性の水素である「トリチウム」が保管されています。トリチウムは最も軽い元素である水素の仲間です。原発でできたトリチウムは、海水に排出されるわけですが、福島第1原発近くの海域と日本海側や九州周辺の海域と比較しても海水中のトリチウム濃度に変わりはありません。

 その一方で、トリチウムは自然界に存在する放射性物質でもありました。宇宙から飛んでくる放射線の一種である宇宙線が、大気中の窒素や酸素と反応して作られるのでした。そのため、トリチウムは雨水にも含まれます。そして、緯度が高くなるほど、つまり北側になればなるほど、雨水に含まれるトリチウムの量は増える傾向にありました。

 このように原発から排出されるトリチウムと雨水のトリチウムを比べると、海水中に放出されるトリチウムに注目が行きやすくはなります。しかし、実際にこれまでの計測結果を見ると、日本周辺の海域のトリチウム濃度と雨水のトリチウム濃度を比べると、場所にもよりますが、雨水の方がおおよそ10倍ほどトリチウム濃度は高いです。

 だからといって、トリチウムから出る放射線は非常に弱く、雨水のトリチウムによる健康影響を考える必要は全くありません。