対応難しくなる広域避難

 

 前回は、災害が起こった際に誰が避難指示を出すのかについて説明しました。避難指示は災害対策基本法という法律に基づいて、市町村長が発令するものです。都道府県知事や内閣総理大臣ではありません。その一方、広域になったり、原子力や放射線という高度に科学的な判断が必要になったりする原発事故では事情が異なりました。今回の原発事故当時は、原子力災害対策特別措置法に基づき、内閣総理大臣が指示を出していました。

 今日は、避難指示による避難先についてお話しようと思います。

 一般の災害の場合、避難は同じ市町村内で行われることがほとんどです。例えば、とある市町村の東側が洪水や台風で影響が出そうな場合、その地域に避難指示が出て、同じ市町村の西側の安全な場所に避難所が開設されるといった具合です。

 避難指示は市町村長が発令するものなので、災害対策の多くも、対応が自身の市町村内で完結することを前提として考えられることが多いです。そのため市町村をまたいだ大規模な広域避難については、対応が難しくなる傾向があります。

 わが国は非常に災害の多い国です。国土は南北に長く、地域によって天候や地理的状況が大きく異なります。そのため、地域ごとの起こり得る災害や状況判断が異なり、歴史的に避難指示は市町村に委ねられています。その一方、この状況は、避難先が市町村をまたぎ遠方になる場合や、いくつかの市町村を含む広い範囲で影響が出る場合の対策が立てづらい構造を招いてしまっているのです。