大倉社長コラム〈12〉WALK TO THE DREAM Jリーグの課題

 

 ◆いわきスポーツクラブ・大倉智社長

 ◆選手育てる役割が大事

 いわきFCは天皇杯県予選2度目の挑戦でJ3の福島ユナイテッドFCに勝って本戦出場を決めた。90分間足を止めなかったか、球際で強かったか、客観的に見ていわきFCが上だった。県社会人1部リーグのアマチュアチームがJ3のチームに勝った。そこにJリーグの課題が見えた。

 いわきFCの選手は、平日の午前中に練習して、午後は物流センター「ドームいわきベース」で働きながら、週末は試合を行っている。そんなアマチュアの選手が1年足らずで成果を出して、カテゴリーでは4ランク上のJ3の「プロ」相手に通用した。実際は2ランク上くらいの差だと思うが、ビジョンを持って若い選手を育てている中での勝利は、喜ばしい半面、Jリーグの本質、カテゴリーごとの本来の役割をあらためて考えさせられた。

 いまのJリーグ上位クラブは、プロの選手補強を中心にチームを作り上げている。高卒とか大卒の選手を獲得して育てると言っても、実際は昨シーズンより上位を狙うための選手の補強に頼ってしまっている。平均年齢にも現れていて、選手補強に頼るがあまり、平均30歳のクラブもあるのはその現れだ。

 世界的にみても下位のリーグが担う役割としては、無名の選手を発掘して、鍛えて育てていくことをコンセプトにやっていけるカテゴリーだと感じた。

 ただJリーグ全体が、下のカテゴリーに落ちたくないとか、上のカテゴリーに上がりたいとか、そこに目的を置いた1年限りの世界では、なにも残らなくなってしまう。大事なのは選手を育てていくことで、その結果カテゴリーが上がるというのでなければならない。カテゴリーごとのクラブのビジョンがしっかりしているかが非常に大事になってくる。

 おおくら・さとし 川崎市出身。早大商学部卒。現役時はJリーグの柏レイソルやジュビロ磐田などでFWで活躍。引退後はセレッソ大阪チーム統括ディレクター、湘南ベルマーレGM、社長などを歴任し、一昨年12月から現職。47歳。