田村監督コラム〈2〉WALK TO THE DREAM 天皇杯の醍醐味

 

 ◆いわきFC・田村雄三監督

 ◆戦い方変えず格上挑戦

 今年も天皇杯が始まった。大会の醍醐味(だいごみ)は、なんと言ってもジャイアントキリング。いわきFCは今年は初戦で負けてしまったが、2017年にJ1コンサドーレ札幌に勝利し、「いわき」の名を全国に知らしめた。ただ裏を返せばこの大会、「やりにくい大会」でもあるだろう。

 JFLや大学のクラブには悩みは少ない。クラブと選手にとって名前を売る絶好のチャンス。監督が選手を空回りさせないよう気を使うくらい、選手はやる気にあふれている。

 一方のJ1、J2の上位カテゴリークラブ。試合日程を理由に、下位カテゴリーのクラブとの試合は「若手のアピールの場」になりがちだ。だからこそ起用法は監督の頭を悩ませる。

 個々の選手に力はあるが、実戦機会が少なく組織の練度は高くない。ここに下位カテゴリークラブの勝機ができる。とは言えコンディションの悪い選手も出せない。結果と成長、休養を天秤にかける難しい判断だ。

 ただ上位クラブにとっては良いスカウトの場でもある。いわきは19年、仙台大に負けたが、決勝点を決めたのはFW岩渕弘人。SB嵯峨理久も出場しており、2人の入団のきっかけになった。

 J1湘南ベルマーレの強化部にいた時は、桐蔭横浜大にいたSB山根視来(みき)(現J1川崎フロンターレ)に出会い、即日練習に呼んだこともある。実際に対戦することほど実力が分かることはない。

 いわきはまだ下位カテゴリーだが、上位相手でも戦い方を変えるつもりはない。自分たちのスタイルがどこまで通用するかどうかに興味があるし、選手もそれを望んでいる。

 だからこそ、そこまで勝ち上がることが必要だ。今年は悔しい結果だった。「良い戦いだった」で満足せず来年こそは躍進したい。

 たむら・ゆうぞう 群馬県出身、中央大卒。2005年に湘南ベルマーレ入団。現役時代のポジションはMF。08年からは選手会長を務めた。10年に引退後、湘南ベルマーレ強化部スタッフを経て15年、いわきFC強化部入り、17年から監督。38歳。