田村監督コラム〈3〉WALK TO THE DREAM アカデミー

 

 ◆いわきFC・田村雄三監督

 ◆学業との両立を重要視

 トップチームだけではなく、育成組織であるアカデミーも同様に重要だ。いわきFCでは2017年に中学生世代のジュニアユースと女子のガールズ、18年に高校生世代のユースチームを設立。人材教育などを理念に掲げ、学業とスポーツの両立を重要視している。

 あいさつに始まり、勉強や英会話、食育などサッカー以外で取り組んでいることも多い。担当のコーチが学校の先生と密に連絡を取り、普段の授業態度や学校生活について把握する。競技面では、戦術よりも「個」をしっかり成長させることが重要だ。年代ごとに必要な技術を取得させるメソッドを成熟させていくことを課題としている。普通のユースなら夏季休業期間は対外試合などを経験させるが、いわきFCでは1カ月程休みにしている。欧州でも同様の取り組みがあり、しっかりと休むことで体の成長を促したり、家族と過ごす時間を設ける。

 子どもたちにはいろんな可能性がある。ほかの道が見つかればそれも重要だ。ただ、可能性に向き合うには、勉強もしなければならない。壁にぶつかったときのために考える力も必要。そのために多方面からアプローチをしている。通信制ではなく、全日制の学校に通ってもらっているのも、普通に味わうべき高校生活を過ごしてもらうためだ。

 一方で、一人でも多くトップチームに上がってほしいという思いはある。地元の子が一人でも多くトップに上がり、それがアカデミー出身ならなお望ましい。

 子どもたちが成長していく姿を見られるのは指導者冥利に尽きる。サッカー選手になるにせよ、もしかしたら違う道を選ぶかもしれない。それでも、しっかりと自分で夢や目標を立てて、人生を歩んでいく手助けができるようにこれからも取り組んでいきたい。

 たむら・ゆうぞう 群馬県出身、中央大卒。2005年に湘南ベルマーレ入団。現役時代のポジションはMF。08年からは選手会長を務めた。10年に引退後、湘南ベルマーレ強化部スタッフを経て15年、いわきFC強化部入り、17年から監督。38歳。