田村監督コラム〈5〉WALK TO THE DREAM 体との向き合い方

 

 ◆いわきFC・田村雄三監督

 ◆けが、セルフケアで防止

 サッカー選手にけがはつきものだ。選手が「完全にベストな状態」にあることは稀で、ねんざ、筋肉の張り、関節の痛みなど、みんなどこかに異常を抱えている。選手は週1回のリーグ戦に向けて様々な調整を行うが、けがとの上手な付き合い方もそのひとつだ。

 けが防止のためには、自分の体の癖などを細かく理解して重点的に鍛えたり回復を促すセルフケアが欠かせない。当たり前だが、こうした体づくりを怠ると再発や悪化につながる。

 けがのサインを見逃さないことも大切だ。いわきは毎週、柔軟性や尿比重など、いくつかの値で選手に異常がないかを確認している。不調やその兆候が見つかったら練習の量を減らすなどして、体にかかる負荷を調節する。

 ただ、選手は調整と同時にポジション争いも行っており、ここが悩ましい。選手は多少の痛みは我慢し、試合に出ようとするからだ。

 選手としては当然の感情だが、監督はそうした選手を止めることが必要だ。選手の意志を無視しないことを心掛けながら、最適な調整を一緒に考える。

 何より大切なことは、こうした体との付き合い方について、自分に合うものを自分で追求することだと思う。多くの練習法や食事法などを勉強し、それらが自分に合っているか試行錯誤を繰り返す。良い選手は自分に足りないものに気がつける賢さも併せ持っていることも多い。こうした積み重ねが長く活躍するひとつの秘訣(ひけつ)なのだろう。

 今は情報技術が進んだことで、多くの情報を手に入れられるようになった。この環境が現役時代にあってほしかったと、正直うらやましい。スポーツに励む人はぜひ様々な知見を取り入れて、自身の体に向き合ってみてほしい。

 たむら・ゆうぞう 群馬県出身、中央大卒。2005年に湘南ベルマーレ入団。現役時代のポジションはMF。08年からは選手会長を務めた。10年に引退後、湘南ベルマーレ強化部スタッフを経て15年、いわきFC強化部入り、17年から監督。38歳。