大倉社長コラム〈72〉WALK TO THE DREAM 昇格かかる正念場

 

◆いわきスポーツクラブ・大倉智社長

◆見えない重圧向き合う

 いわきはリーグ戦残り7戦を切ってから、いつも通りのパフォーマンスができていないように感じる。優勝やJ3昇格が現実味を帯び、勝ちたいあまりに落ち着きのなさや焦りが出ているように感じる。若さゆえの苦しみかもしれない。

 ただでさえ、シーズン終盤はサッカー選手にとって集中が難しい時期と言われている。シーズン終了直後に契約更新を控えており、自分自身の評価や将来について考えが巡りがちになるからだ。そこにチームの昇格のプレッシャーものしかかってくる。

 昇格がかかるシーズン終盤に特有の「見えないプレッシャー」は、クラブが大きくなる中で避けては通れない道だと思う。湘南ベルマーレでのフロント時代に同じようなことを何度も経験したし、ほかのJクラブでも驚くほどチームが変わってしまう姿をたくさん見てきた。いわきにとっても、普段できていたことができなくなることは当たり前のことだと思う。プレッシャーが「見えない」理由は、選手が自覚しにくいものだからだ。選手がそれを乗り越えるためには、まずプレッシャーがあったことを素直に受け入れ、向き合うことが必要となる。

 2012(平成24)年にJ1昇格を果たした時の湘南は、平均年齢が23歳の若いチームだった。そのチームから出てきたのが遠藤航(シュツッツガルト)や永木亮太(鹿島アントラーズ)。彼らは若い内に昇格の苦しさを経験したからこそ、リーダーとなれる選手に成長していった。

 いわきもまだまだ若いチーム。選手たちはこの苦しみを良い経験と捉えてほしい。結果ばかりを追わずに地に足をつけ、自分がやれる目の前のことを積み重ねていけば良い。さあ、ここからが正念場。皆様の応援を宜しくお願いします。

 おおくら・さとし 川崎市出身。早大商学部卒。現役時はJリーグの柏レイソルやジュビロ磐田などでFWで活躍。引退後はセレッソ大阪チーム統括ディレクター、湘南ベルマーレGM、社長などを歴任し、2015年12月から現職。52歳。