大倉社長コラム〈75〉WALK TO THE DREAM 強化戦略

 

 ◆いわきスポーツクラブ・大倉智社長

 ◆選手獲得、伸びしろ重視

 いわきの強化戦略のキーワードは「チームビルディング」。有名な監督や選手に頼るのではなく、強い組織の中で選手が成長することで勝利を目指している。この方針の下で欲しいのは、若くて吸収力のある選手。選手の平均年齢は25歳に収めることを基本にしており、高卒、大卒、Jクラブの所属は問わない。

 スカウトにおいて、獲得する選手の条件は明確に定義している。例えばスピードや頭を上げてボールを扱う能力は、良い選手に共通する要素で譲れない。

 これらに加えて成長の「伸びしろ」も見る。親の身長、体重は身体的な伸びしろ。このほかも勉強への向き合い方などの性格や、今までの所属チームでの起用法や活躍状況、その理由など...。これらを監督やコーチから徹底的に聞き出し、いわきで成長する道筋が見えた選手を獲得している。

 ところで、今までは高卒選手を獲得することが少なかったが、ここには理由がある。ひとつはソフト面の問題。人的な資源がそろわず、高校生の年代まで見ることができなかった。

 ここに関しては現在、田村雄三スポーツディレクターを先頭に小学生~20歳前半までの全年代をカバーするスカウト体制を構築している。これからはユースチームのスタッフとも連係しながら、クラブ全体で戦略的に見られるようになる。

 もうひとつはハード面の問題で、トップチームに寮がないことだ。高卒選手がいきなり1人暮らしをするのは簡単なことではない。人を育てるクラブとしてもサッカー以外の生活環境は整えなければならない。

 選手は若ければ若いほど良い。環境が整えば高卒選手も積極的に取っていきたい。若くて将来有望な選手が成長を求めてやって来る。そんなクラブを今後も目指していく。

 おおくら・さとし 川崎市出身。早大商学部卒。現役時はJリーグの柏レイソルやジュビロ磐田などでFWで活躍。引退後はセレッソ大阪チーム統括ディレクター、湘南ベルマーレGM、社長などを歴任し、2015年12月から現職。52歳。