田村SDコラム〈8〉WALK TO THE DREAM J参入後の目標

 

 ◆いわきFC・田村雄三SD

 ◆組織の方向性探る1年に

 昨季まで務めた監督との時間の流れに違いを感じる日々だ。昨年であればJFL優勝という1年間の目標があり、そこから導かれる半年、3カ月の短期間の目標めがけて走った。毎週リーグ戦があり、1週間単位で選手の起用や調整を考えた。

 スポーツディレクター(SD)として働く今は、より抽象的で、長期に渡る課題に取り組んでいる。どうすれば良いクラブをつくれるか、アカデミーをもっと良くするためにはどうすれば良いか、そのための組織、練習は...。1年間、もしくはそれ以上の時間をかけてつくるべき組織のあり方を細かく、明確に定義しなくてはならない。

 例えばアカデミー。プロ選手を輩出することは目標の一つだ。プロには上手さ、強さ、速さの三つが求められるが、問題はそれら能力の伸び方に個人差があることだ。選手一人一人がいつまでにどのような能力を身に付けなければならないか、年齢を重ねる中でそれぞれの能力が積み上がる練習の体系になっているか、などが重要になってくる。

 縦方向に速く攻めることを志向するトップチームのサッカーから逆算した取り組みも必要だ。成長期にトレーニングの負荷が大きすぎると悪影響も出るため、まずはボールを止める、蹴るなどの技術の基礎を徹底的に鍛える。筋力トレーニングや速いサッカーを覚えるのは、高校生になってからで良いのではないかと考えている。

 昨季の最終戦、サポーターの前で「『いわきWAY』を作っていきたい」とスピーチした。Jクラブになったからといって、他のJクラブと同じ様にならなくても良いはずだ。さまざまな面で唯一無二のクラブになりたい。SDとして、あらためていわきの強みと課題を見直し、いわきが向かうべき方向を見つける1年にしたい。

 たむら・ゆうぞう 群馬県出身、中央大卒。2005年に湘南ベルマーレ入団。現役時代のポジションはMF。08年から選手会長を務めた。10年に引退後、湘南ベルマーレ強化部を経て15年にいわきFC強化部入り、17~21年に監督を務めた。39歳。