田村SDコラム〈9〉WALK TO THE DREAM J3初黒星

 

 ◆いわきFC・田村雄三SD

 ◆「球際対策」今治が上手

 リーグ戦6試合目にして初黒星となった。FC今治に惨敗の内容だったと思う。一般的に5試合くらいを戦えば、どのチームについても、データによって戦い方が分かってくる。今治はいわきの戦い方をよく理解していて、対策も効果的だった。

 まずは球際(デュエル)。独自に取っているデュエルの勝率が、今季初めて相手に上回られた。試合後に今治のコーチから聞いた話では「球際でしっかり戦えないといわきに食われる」と選手に伝えていたという。

 デュエルに勝つことはサッカーの前提。いわきはもう一度、根底の部分を見つめ直さなければならない。

 今治はプレス回避も効果的だった。いわきはボールを奪われた瞬間にプレスをかけるが、それに対してダイレクトのパス交換でプレスを無効化していた。

 また、いわきの両サイドバックを攻撃参加させないような立ち位置を取って、いわきの攻撃力を半減させてきた。

 一方でいわきのプレーを見ると、判断をせずにボールを蹴ってしまう選手がいたように見えた。サッカーは相手があるスポーツなので、常に判断が求められる。個人戦術にもチーム戦術にも伸びしろがあると言うことだろう。

 こうした特徴や弱点は、試合前のスカウティングで互いに分かっていることだ。相手がどのように弱みを突いてくるかも分かっている中での戦い。総合して、今回は今治が上手だったということだ。どのチームも今後は、いわき対策として今治の戦い方を参考にするだろう。これから戦い方が問われている。

 とはいえ、1敗したくらいで今までの戦い方を否定することもない。勝っている時は、改善点に気が付きづらいものだ。課題が見つかるからこそ、克服すればチームが強くなる。大切なのは連敗しないことだ。

 たむら・ゆうぞう 群馬県出身、中央大卒。2005年に湘南ベルマーレ入団。現役時代のポジションはMF。08年から選手会長を務めた。10年に引退後、湘南ベルマーレ強化部を経て15年にいわきFC強化部入り、17~21年に監督を務めた。39歳。